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2014年9月の市況と、来年への対策

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あまり新聞では報道されませんが、この4月の消費税8%への増税の影響がかなり出ている様です。

例えば8月の首都圏マンション発売戸数は前年比49.1%減の2110戸となったそうです。前年比での減少は7ヶ月連続ですが、8月は特に悪い、ということです。

そしてこれはリーマン・ショックの時と同じ水準です。

同じく8月の国内の新車の販売台数は前年比9.1%減の33万3471台でした。ただし中古車市場には相当数の未使用車が出回っており、実際にはさらに悪い数字だったのではないかと言われています。

こうした影響もあってか、ホンダは年内の生産を減産すると言います。

大手ハウスメーカーも8月の受注残は前年比80~60%の水準で、昨年の同時期が118~145%だったことを考えれば、大きなマイナスです。

こうした結果を受け、ドイツ証券は「日本は再び景気後退期に入った」との分析を出しています。

消費税を上げれば確実に景気が悪化する、と言われてきましたが予想以上の反動ではないでしょうか。

そうした中、株式だけは上昇し続けています。多少の変動はあるものの、日経平均株価は1万6000円を超え、この点だけを見ると景気は好調に見えます。

ただし、この6月から数百億円単位で買いオペレーションを繰り返しているのは日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)だと言われています。

異次元の金融緩和で増刷した円で、株式を買い入れているのです。

常識的に考えると、かなり違和感のある施策です。

当局としては買いオペレーションで株価を上げ、景気は回復したとの判断で来年10月の消費税10%への値上げを国会で可決する、との見方が大勢です。

8%への増税でこれだけ悪影響が出ているわけですから、いかに円安好況とはいえ、生産財業界にも影響が及ぶでしょう。

ちなみに海外のメディアは、日本政府の消費税増税は明らかな愚策で、このままでは日本は再び深刻なデフレ不況に陥ると言われています。

こうした時代に、中小企業が取るべき戦略は次の3つです。

1)商圏の拡大

2)デフレ対応ビジネス(=Reビジネス)の取り込み

3)自社のブランド力アップ

まず1)について言えば、大手企業でいえば海外進出ということになります。中小企業の場合は地域密着企業が大半ですから、地域密着企業の場合はエリア拡大、あるいは関東圏への拠点進出ということになります。

もちろんその為には新規開拓が行える“武器”が必要になります。

その為の施策が2)3)になります。

2)のReビジネスについていえば、中古・メンテナンス・リサイクル・リバースエンジニアリング といった事業のことです。

例えばヨーロッパの某熱交換器メーカーは、他社の製品であっても熱交換器のメンテナンスを行います。熱交換器はメンテナンスを行うことで性能が上がり、その結果省エネになります。

近年のエネルギーコスト増大に対応する、大手企業の省エネニーズを取り込み、同社は日本国内でシェアを伸ばしています。

つまりメンテナンスを切り口に顧客に入り込み、自社製品の販売につなげる動線をつくっているのです。

また3)自社のブランド力アップ について言えば、自社を「メーカー化」することです。

例えば機械工具商社と言うのは、商品を右から左に流して利益を取るのが基本のビジネスモデルです。

しかし今や、定価の決まったナショナルブランド商品を右から左に流しても利益は確保できません。

そこで機械工具商社について言えば、「地域密着メーカー」を目指すのです。

工場での購買をよく見ていると、その工場“専門”の製品が結構あります。例えば“通い箱”“作業台”“タンク”“台車”“治具”といったものです。

こうした、その工場“専門”の製品、言い換えると“特注”の製品は、ナショナルブランドメーカーから買うと非常に高くなります。

そこで工場では出入りの鉄工所に、こうしたその工場“専門”の製品を発注している訳ですが、多くの場合こうした鉄工所は少人数で十分な営業サービスが行えていません。

また鉄工所からすれば現場で使用するこうした“特注”の製品は、あくまでスポット対応の仕事であり、本来のベースとなる仕事ではありません。ですからお客様への対応も不十分になるケースが多々あります。

そこを機械工具商社が「地域密着メーカー」というコンセプトで、こうした仕事を受注するのです。もちろん機械工具商社自らが製造するのではありません。あくまで外注を活用するのです。

この「地域密着メーカー」の良いところは、価格競争にならないことです。実際、この取り組みを行っている私の関係先の機械工具商社を見ると、失注の理由はほぼ「お客様が内製することになった」「計画が中止になった」ということで、他社と相見積りになって価格で負けたというケースは、ほぼ皆無でした。

また部品加工業の場合は、設計者の必需品となる様なカタログをつくり、自社を「特注メーカー」として演出することが効果的です。

私の関係先の樹脂加工業某社は、工業用銘板総合カタログを制作することで、従業員8名という小所帯ながら優良顧客の新規開拓に成功しています。

また機械加工業某社も、特注治具総合カタログを制作することでJIMTOF出展を行うことができる様になるなどし、やはり優良顧客の新規開拓に成功しています。

こうした戦略は部品加工業の「特注メーカー化」ということです。

いずれにせよ、目先は忙しいかもしれませんが、この8月、9月の市況を見ていると、来年の10月以降は非常に不安です。

前述の1)2)3)いずれかの新たな戦略が必要だと思います。

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