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2014年5月の生産財業界の市況

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この5月に入り、生産財業界の市況に変化が見られました。

それは業種・エリアによって差がありますが、おしなべて思ったよりも悪かった、ということです。

ここ数ヶ月を振り返ると、消費税の駆け込み需要とは無縁と思われていた我々の業界も、3月後半は消費税の駆け込みが多くの会社で見られました。その結果、3月の売上は過去最高、という会社も少なからず見られたのです。

そして、その反動が心配された4月においては思ったほどの落ち込みが無く、5月もこのまま好調に推移するかと思いきや、思いのほか不調に終わった会社が全般的に多いといえます。特に地方都市において、この傾向が顕著です。

今動きがあるのは海外向けの案件ばかりです。国内の設備投資については、ほとんど大きな動きがありません。

そうしたことを反映してか、スペック・インする部品を生産する部品加工業あるいは金型製造業においては、5月も著しく多忙でした。

ところが国内の設備投資に頼る、セットメーカーや機械工具商社においては、この5月は不振だったのです。実際、例年であれば5月の連休には連休工事が多くの大手企業で見られますが、今年はあまり連休工事の話は聞かれませんでした。

連休工事が少なかったことに加え、ゴールデンウィークにより稼働日が減ると、そのまま売上減につながった会社が多かった、ということだと思います。

もちろん円安の影響もあり、6月に入ってからは商談が増えてきている様ですが、異次元の金融緩和による円安の影響を除くと、とてもではありませんが景気回復とは言えない状況だと思います。

そうした中で、先日興味深い本を読みました。

「資本主義の終焉と歴史の危機」水野和夫著 という本です。著者はエコノミストを経て内閣審議官を務めた人物ですが、同書によると金利2%が10年以上も続く先進国においては、既に資本主義が崩壊していると指摘しています。

なぜなら金利が2%を切ると、資金を貸し出す側にとって利潤がほとんど上がらないからです。

資本主義のメカニズムとは、資本を投下して利潤を得て、さらに資本を自己増殖させることが基本であり、その利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が資本主義として機能していない兆候である、というのです。

歴史的に同じ現象が見られたのが、16世紀末のイタリアであったといいます。当時のイタリアでは山の上から下まで全てが葡萄畑となり、新たに投資する対象がほとんど無くなってしまったそうです。当時の最先端産業はワイン製造業であり、葡萄畑を新たにつくるところが無い、ということは利潤を生み出す投資先がもう無いことを意味しているのです。

現在我々が置かれている状況も同じだと著者はいいます。先進国は根本的に設備過剰であり、またインフラも隅々まで行き渡っています。これ以上投資する対象が無いからこそ、2%を切る様な金利の状態が10年以上も続いている、と言うのです。

16世紀末のイタリアに話を戻すと、その後の転換点は1700年のイギリスによる東インド会社設立にあります。東インド会社が設立され、新たなフロンティアがヨーロッパからアジアに拡大した結果、投資が再開され、再び金利が8%近くまで上がります。

資本主義を持続するためには新たなフロンティアが不可欠なのです。

現代における、今までの新たなフロンティアは中国・ASEAN・ロシア・ブラジルといった新興国でした。ところがこうした新興国においても、近年では成長率が低下しています。

また、中国の高度経済成長も結局のところアメリカを始めとする先進国の需要に支えられていたことを考えると、今後はかつてほどの経済成長が望めないであろう、というのが著者の見解です。

歴史的は繰り返す、という歴史的事実を踏まえれば、どこかの段階で新たなフロンティアが生まれ、新たな投資先が生まれるでしょう。

それはインターネットかもしれませんし、あるいは再生エネルギーや環境技術かもしれません。

しかし当面はかつての右肩上がりの経済成長が望めない以上、経営者として考えるべきことは、「新たな販売チャネルの付加」または「新たな業態の付加」を考える、ということです。

あるいは低成長の中でも人口動態の変化によって伸びる産業への参入、具体的には医療機器業界やEラーニング、さらに前述の商圏の拡大というトレンドに伴い成長が予想される航空機業界、さらに通販関連ビジネス(物流・決済など)も同様です。

さらに前述の著者も述べていますが、投資先が無く低金利の状態が続くと必ずデフレに陥るといいます。現在のデフレは100年デフレとも言われています。

従って経営者が合わせて考えなければならないことは、いかに価格競争を回避するか、ということです。

価格競争を回避する上での鉄則は「顧客体験(=カスタマー・エクスペリエンス)を売る」ということですが、日本よりも早い段階で成熟期を迎えた欧米においては、生産財業界も含め、あらゆるビジネス分野においてカスタマー・エクスペリエンスを重視しています。

そうした意味で、私個人としては欧米先進国を対象とした海外視察は非常に得るところが多いです。

今年10月5日~11日にもアメリカ東海岸で視察セミナーを企画しています。毎年100名以上の経営者がご参加される大型視察セミナーで、インプット量も通常の視察セミナーとは比較になりません。

ぜひお奨めさせていただきたいと思います。

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