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「いかに高く売るか?」を実現するのが、その会社のブランド(スイスブランド企業視察セミナーより)

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この5月18日から24日まで、スイスブランド企業視察セミナーに講師として参加していました。

視察先のスイス企業で頻繁に耳にしたのは「どんな商品でも“メイド・イン・スイス”と書くだけで3割は高く売れる」ということです。

つまり“ブランド”とは、「いかに高く売るか?」ということだと思います。

では、いかにして“ブランド”をつくっていけば良いのでしょうか?

今回の視察セミナーで感じたことを、中小企業でも取り入れることができる様に、7つのポイントにまとめてみました。

1)「1番」になる(=最初に始める)

今回の視察先企業は全て、何らかの形で「1番」を持っていました。

あるいは「最初に始めた」結果、「1番」になった会社が大半でした。

・リンツ・・・世界で最初に固形チョコレートをつくる

・スチューダ・・・世界で最初に花崗岩ベッドの工作機械をつくる

・UBS・・・スイス最古・No1のプライベートバンク

・ノバルティス・・・研究開発費で世界一

・ネスレ・・・世界で最初に粉ミルクをつくった

・ラ・プレリー・・・世界で最初に動物細胞の注射で美容を行った

・IMD・・・オープン・プログラムで1番

・ル・ロゼ・・・スイス最古の寄宿学校

・オーデマ・ピゲ・・・世界で最初にトゥール・ビヨンを腕時計に

2)1番になるまでセグメントする

とはいえ、今の世の中、大半のものは既に始められています。また資本力に限りがある中小企業が1番になる為には、どうすれば良いのでしょうか?

例えば今回の視察先のIMD(大学院:ビジネススクール)は、設立が1990年であり、アメリカのハーバード大学などアイビーリーグと比べて大きく遅れをとっています。

そこでIMDは企業向けの期間限定のプログラムである“オープン・プログラム”に注力し、まずこの分野で世界一の評価を取りました(英国フィナンシャルタイムスによるランキング)。

またIMDは“ファミリー・ビジネス”の研究に力を入れており、経営と資本の分離をうたうアメリカのビジネススクールと、この点でも差別化を図っています。

3)既存のものを組み合わせて最初に始める

また、スイス時計の技術の代名詞とも言われるトゥール・ビヨン(=時計にかかる重力を回避する複雑機構のこと)を世界最初に開発したのはブレゲ社です(1801年)。ところがこの機構は小型化するのが極めて難しく、この機構を腕時計に搭載することに成功したのがオーデマ・ピゲ社で、これは1986年のことです。

トゥール・ビヨンも腕時計も既存の技術です。ただしこれを組み合わせることによって、同社は新たなジャンルの創始者となったのです。

4)歴史を語る・ストーリーを売る

今回視察したほぼ全ての企業にミュージアムが併設されていました。またリンツ社においては、菓子職人の衣装に着替えてのチョコレート製作体験、オーデマ・ピゲ社に至ってはトゥール・ビヨンを組立てる時計工房までも視察させてくれました。

これらはモノを売るのではなく、ストーリー・体験を売るということです。いずれに視察先も「カスタマー・エクスペリエンス(=顧客体験)」を重視していました。

5)口コミを重視する

口コミでなければ売れない商品もあります。特に富裕層を対象としたマーケティングは口コミが基本です。

今回視察したクリニック・ラ・プレリーは1週間の滞在が300万円以上のクリニックです。同クリニックは費用のかかる宣伝広告は一切行ったことがありません。全て有名人による口コミです。

特にローマ法王が同クリニックを訪れて療養したことが、同クリニックの名声を一気に高めました。

またスチューダ社とIMDについては、購入客に対して「購入した商品を知り合いに紹介したいか・したくないか」という10段階のアンケートによる追跡調査を実施しています。なおスチューダ社の場合、最低ランクの1~2の評価だった場合は、社長自らが問題解決に乗り出す、といいます。

6)理念の共有・可視化

ノバルティスやネスレはもちろん、今回視察した企業の大半がアニュアル・レポート(=年次報告書)をまとめ、その中にクレドも含めて理念の共有・可視化に努めていました。

特に多国籍企業であるネスレは理念・価値観の共有(シェアード・バリューズ)に力を入れており、人事評価においても売上・利益だけでなく、人間性を評価の中に取り入れていることを強調していました。

7)変化し続けること

例えば前述のオーデマ・ピゲ社の場合、革新的な時計を次々に生み出しています。耐久性を重視してヨットレース向けに開発されたカーボンボディのモデル、金(ゴールド)の時計よりも高価な機械時計ロイヤルオークなど、常に革新的な商品を生み出すことを強く意識して商品開発に取り組んでいます。

施設の拡張・新設工事を続けるラ・プレリーやル・ロゼ、世界一の研究開発費を投じるノバルティスなど、各社変化し続けていることが強く伝わってきました。

スイスブランド企業といえば雲の上の存在で、我々中小企業には縁遠い様に思えます。

しかし前述の7つのポイントの中から言えば、

・顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)を売る

⇒積極的に企業視察を受け入れる

⇒自社の歴史を語るツールをつくる

・理念・価値観を見える化する

・口コミを重視する

⇒満足度アンケートを取る

など、自社でも取り入れられることは多数あると思います。

なお今回のスイス視察セミナーのレポートを、下記Webサイトにアップしました。

↓↓↓スイスブランド企業視察レポートはこちら

https://seizougyou-koujoukeiei.funaisoken.co.jp/commentary/swiss2014/report1.html

ぜひご覧いただき、ご参考にしていただきたいと思います。

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