生産財業界は全般的に市況が改善してきている様です。
先週の金曜日、機械工具商社経営研究会(https://www.funaisoken.co.jp/site/study/mfts_1184910868_225.html)が開催されましたが、約30社のうち7~8割までの会員企業様が、昨年対比110~130%と好調な数字をつけておられました。
また、当初はあまり無いと思われていた、消費税への駆け込み需要も結構あった様です。特に3月20日から最後の10日間くらいは「至急モーターがほしい」「部材を今月中に入れて欲しい」といった様な駆け込みがあり、在庫を持っている問屋などは売上がかなり上がったといいます。会社によってはこの期間、昨年対比2倍とかそういうレベルで数字があがったといいます。
ただし、こうした駆け込みがあったのは中小ユーザーのみです。年間予算が決められている大手ではこうした動きはありません。
こうした駆け込み需要があると、4月に入ってからの反動が心配でしたが、ほとんどの会社で4月に入っての反動はありませんでした。
逆に、4月も好調なペースが続く勢いです。
経営者の中でも厳しい見方をされる方は、「この4月以降から景気が大きく失速するのでは?」という見解の方もいらっしゃいましたが、そうした見方をされていた経営者の方も、「来年いっぱいは現在の流れは続くか?」との見方に変わっていました。
こうした市況が改善した要因は、やはり「円安」にあります。
そもそも現在、国内に残っているものづくりの大半は生産財です。自動車・家電といった消費財は大半が海外に生産移転されました(それが日本の貿易赤字の主因です)。
この、生産財は消費財と比べて価格弾力性が低い商品です。“価格弾力性が低い”とはどういう意味かというと、価格が下がったからといって簡単には売れない、ということです。
例えばハンバーガーか何かであれば価格が下がれば飛ぶように売れるでしょう。外食などは価格弾力性が高いからです。
ところが、生産財は価格が下がったからといって、必要が無いものは買いません。ですから、円安になってから実際に日本国内の景気が上向くまでにタイムラグがあったわけです。
実際、例えばロボットあるいはロボット用減速機など、世界レベルで日本の技術レベルが高い分野についていえば、生産はリーマン・ショック前のピークと変わらないレベルになっています。
自動車もタイや中国は不調が伝えられますが、インドネシアや北米は好調です。発電プラントなど燃焼系と言われているエネルギー分野も、注文をさばききれないくらいの受注が入っているといいます。
コンサルタントをやっていてつくづく感じることは、様々なマーケティングや生産性向上への取り組み、社員教育など、色々な手を尽くしていても不況になると残念ながら売上が落ちます。
ところが、色々な手を尽くしている会社というのは、落ちた後の立ち上がりが全然違います。また赤字になりにくい体質になっています。
さらに、現在の様に市況が上向いてきた時の立ち上がりが全然違います。普段から色々な取り組みを行っている会社は、立ち上がりが極めて大きいといえます。
具体的には新規開拓です。
前述の機械工具商社経営研究会の会員企業様の中でも、新規開拓に普段から取り組み、そこで成果を上げられている会社は立ち上がりが良いです。
現在は円安で市況が多少上向いているとはいえ、根本的に国内の製造業マーケットは右肩下がりです(これは製造業だけでなく、小売業も外食産業も同じことですが)。
従って、こうした時流に対処していく為には、
1)商圏を広げる(=新規開拓)
2)業態を付加する(=新規事業)
しかありません。
余談ですが、先日、静岡県の創業137年の寿司屋さんに、コンサルティング先の社長さんと伺いました。昼のランチタイムでしたが、カウンターは我々しかいません。ところが厨房は忙しそうにしています。
聞くと店の裏に座敷のある新館を建てて、慶弔行事や法人の予約をとっているといいます。今日は結納か何かの場があって忙しい、と言われていました。なぜ寿司屋に座敷があるのかというと、先代が東京の一流料亭に修行にいって、その時から懐石料理も出る様になったといいます。懐石料理の場合は、最後に寿司が出てきます。
つまりこの老舗の寿司屋は、新規開拓と業態の付加を両方やっている、ということです。さらに懐石料理ができるので、正月にはおせち料理も売れ、また弁当や仕出しもやっているといいます。寿司屋でもカウンターしか無い店は苦戦している、といいます。
その様に考えると、どの様なビジネスでも根本的な成功要因は同じであると言えます。
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