前回のレポートにもお伝えした通り、現在の景気は「マダラ景気」です。その要因は、今まで製造業を牽引してきた自動車・家電・ITなどの消費財の海外生産移転が進んだことです。
その結果、これだけ円安が進んでも貿易赤字になっているのです。
では日本で製造業がダメになるかというと、そんなことはありません。それは北米やヨーロッパなど欧米先進国を見ればわかります。
例えば北米東海岸においては、もっとも工作機械ニーズのある産業はエネルギー・航空機(防衛産業)・医療機器・社会インフラ・産業機械の順番です。近年はアメリカでも軍事費の削減を進めていますから、日本同様に注目されてきている業界は医療機器です。
ドイツにおいても自動車・ITといった大量生産の産業はトルコ・東欧・中国など人件費の安い国々に流出し、ドイツ国内においては産業機械・エネルギー・医療機器・社会インフラといった生産財産業しか残っていません。
特に医療機器については、ドイツもアメリカのシリコンバレーも非常に注目を注いでいます。理由は1947年以降に生まれたベビーブーマーがこれから一気に高齢化していくからです。
日本においても、これから医療機器産業はIT産業並みのマーケットになることが見込まれます。
例えば日本における医療機器の輸出は約5000億円ですが、輸入は約1兆円です。すなわち医療機器の部分だけで約5000億円の貿易赤字です。
私がセミナーで「医療機器業界参入」を打ち出す理由として、成長分野であることはもちろんありますが、少しでも日本の貿易赤字を減らしていきたい、という思いがあります。
話を戻すと、私が言いたいことは、日本と発展途上国(中国・アジア)との関係を見ていても、国内ビジネスのヒントは非常に少ない、ということです。
それよりも日本と先進国(ヨーロッパ・アメリカ)との関係を見た方が、絶対に国内ビジネスのヒントがある、ということなのです。
例えば私は昨年、一昨年とドイツ視察セミナーを行いました。その中で、ドイツ企業の生産性が高い秘密は、彼らが「第三の場」を持っていることではないかという考察に私は至りました。
「第三の場」とは、“家庭”“職場”とは違う第三の場、ドイツの場合は“教会”というコミュニティです。
ドイツはプロテスタントという自責的な宗教(=教会だけに頼らず自分で聖書を読み解く)であることに加え、その中で教会が地域の強力なコミュニティを形成しています。
ちなみにドイツでは日曜日はあらゆる商業施設は休みです。理由は教会がそうした指導をしているからです。
以前に、ドイツのある百貨店が日曜日に営業をしていたら訴えられ、裁判で負けるという事例があります。それくらい、ドイツでは教会が力を持っているのです。
ドイツには24時間営業のコンビニが一切無いのも、教会がそうした働き方を禁じているからです。
その中であらゆる人が週に1回は祈りの中で自分を振り返ります。
私はあらゆる人がそうした時間を持つこと、また第三の場への強力な帰属意識、さらにプロテスタント特有の“天職発想”が、ドイツの高い生産性を生み出しているのではないかと強く感じました。
ちなみに、デンマーク・オランダ・ノルウェー・スウェーデンなどの北欧諸国も高い生産性で知られますが、これらの国もドイツと同様の文化的。宗教的土壌を持ちます。
そして、こうしたことは行ってみないことには、わからないことです。
私がドイツに行って強く感じたことは、日本にはドイツの様な「第三の場」がオフィシャルには存在しない、ということです。従って日本の場合は「会社がコミュニティ」の役割を同時に持たなければならない、ということを強く感じた次第です。
ちなみに、船井総研が毎年開催しているグレートカンパニーアワードの受賞企業というのは例外なく、「会社がコミュニティ」の機能を強く持っていることがわかります。
そうした意味で、今年5月18日(日曜日)~5月24日(土曜日)に企画している“スイスブランド企業視察セミナー”も得るところは大きいと思います。
スイスといえば時計・観光産業が有名ですが、今やスイスの中心産業は医療・バイオ・化学・機械に加え金融です。
例えば医療関連の会社の集積度は異様に高く、医療機器に関していえば製造企業が220社、供給企業が520社にものぼり、その63%が輸出されています。
さらに、スイスは人口800万人と兵庫県と変わらない人口でありながら、世界トップシェアを持つ多国籍企業が20社以上も存在しています。これは驚異的なことです。
今回の視察セミナーで、こうした世界の時流を先取りするスイスの秘密を探ってきたいと思っています。
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