CSV経営が今、注目を集めています。CSVとはCreating Shared Valueとなり、直訳すれば「共有価値の創造」ということになります。
2011年からハーバード大学のマイケル・ポーター教授がCSR(企業の社会的責任)に代わる概念として提唱しています。
CSRは寄付や社会貢献活動によって、企業が社会的責任を果たすことを意味します。例えば企業メセナや寄付金、またそうした活動をまとめたCSR報告書が、大手企業のホームページを見ると掲載されていることがわかります。
ところが近年の不況により、大手企業といえども余裕が無くなってきたこと、また活動そのもののマンネリ化もあり、近年のCSRは行き詰まりを見せている、とも言われていました。
その点、CSVは企業の事業活動そのものを地域、社会、環境、さらには自社にとっての「共有価値の創造」となることを目的としています。
つまり、事業そのものが利潤を生み出すだけでなく、社会・環境にとってもプラスに働くという理想的な経営がCSV経営なのです。
そして世界レベルでこのCSV経営に取り組んでいる代表企業がスイスのネスレです。
ネスレはカカオやパーム油などの原料調達に際し、自然を破壊することなく持続可能性があることに加え、農家・地域コミュニティが発展することを調達ガイドラインとしています。
また日本におけるCSV経営の成功例は、自動車メーカー各社のハイブリッド車でしょう。
ハイブリッド車は決して安い買い物ではありません。しかしハイブリッド車に乗ることで、地球環境の保全につながるというコンセプトが共感を呼んでいるわけです。
日本のハイブリッド車はアメリカでも大きな共感を呼び、飛ぶ様に売れています。カリフォルニア州では、優先的にバスレーンを走れる施策がとられるほど、受け入れられています。
さらにCSV経営は大手だけのもの、では決してありません。
例えば船井総研グレートカンパニーアワードの受賞企業各社は、まさにCSV経営に取り組んでいます。
第1回受賞企業の㈱OKUTAは自然素材のみをつかったリフォームで、第2回受賞企業の株式会社エブリイは“地縁店”による地域コミュニティづくりで、第3回受賞企業の株式会社さわやか倶楽部は入居者の自立によって、第4回受賞企業の白ハト食品工業株式会社は農業から加工、販売まで一貫した取り組みの中で、このCSV経営を結果として行っていることがよくわかります。
つまり大手企業であれ、中小企業であれ、企業の利潤追求と社会貢献・持続性の維持は決して矛盾するものでは無いのです。
私は前述のグレートカンパニーアワードの事務局をアワードの創設以来担当しているのでよくわかりますが、CSV経営に取り組んでいる中小企業は結果的に業績が良いのです。
船井総研の取締役執行役員である唐土は、中小企業が生産性を高めるためには、社員の人生の目標と会社の目的を一致させる必要がある、といいます。それもCSV経営と言えるでしょう。
現代はより「共感」が必要な時代になっています。ぜひ自社においてもCSV経営を考えてみていただきたいと思います。
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