景気変動の波として有名なものに、60年ごとに訪れるゴンドラチェフの波があります。これは技術革新や産業構造の変革により、大きな時代の変化が60年ごとに起きるというものですが、この60年という数字には特別の意味合いがあります。
例えば創業60年の会社は、ほとんどのケースで3代目が社長となり、創業者が顧問、2代目が会長といったところでしょう。つまり60年というのは3代目への移行の年、と言えるのです。
ここで興味深い話が「トインビーの移民の話」です。
トインビーとは著名なイギリスの歴史学者ですが、彼の研究によれば、アメリカ移民は老人になってから英会話を習い始めるケースが多いといいます。例えばイタリア移民の場合、最初にアメリカに移民した初代はリトル・イタリーの様なコロニーで生活をするので、英語を覚える必要が無い、といいます。そして初代移民の子供(2代目)は、家庭内では自国語を話し、外では英語を話す様になる、といいます。ところがその孫(3代目)の代になると、もはや英語しか話すことができなくなると言います。
そうすると、その初代と孫との間でコミュニケーションを取ることができません。そこで、かわいい孫と話をするがために老人になってから英会話教室に通い始める、というのです。
つまり初代の価値観と3代目の価値観は大きく異なる、場合によっては全く異なる、ということが「トインビーの移民の話」から伺えます。
ゴンドラチェフの波が起きる原因として、「戦争」「技術革新」が挙げられますが、私はこうした「価値観の大きな変化」もその要因ではないかと思います。また「3代目が会社を潰す」ともよく言われますが、これは創業者の理念・考え方がきちんと引き継がれないことによるものだと私は思います。
またゴンドラチェフの波の理論でいくと、2010年から新たな60年が始まった、という見方をすることができます。
ちなみに1890年から1950年までの60年間は「自動車・化学・電気」の60年でした。さらに1950年から2010年までの60年間は「コンピューター・IT」の60年間でした。
2010年からの60年間は「インターネット・新エネルギー」の60年になると言われています。
事実、インターネット技術が決定的に代わったのは2010年前後の“ワイヤレス技術”“クラウド(ビッグデータ)技術”からです。これにより世の中のインターネット化が一気に進みました。インターネット販売あるいはインターネット集客を無視して、地域密着企業であったとして生き残れない時代が来るでしょう。
いずれにせよ、こうした新たな技術革新に対応していくと同時に、創業者の理念や自社の存在意義をきちんと捉えていくことが、今こそ必要な時ではないでしょうか。
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