前回のレポートでも述べた通り、今、業績の良い会社の共通点は「デフレ対策商品」を持っている、ということです。
例えば最近では「カット野菜」の売れ行きが好調だといいます。
味の素もカット野菜の生産を3割増やし、セブンイレブンも品揃えを拡充するといいます。
またアイリスオーヤマは従来キロ単位で売られていたお米を3合パックで売り出し、好評を得ています。
ここ3年間で世帯所得は約1割も減少していますが、その結果として共働きが増え、調理が容易な小口食材が売れているのです。
また小口食材であれば多少割高でも、多く買いすぎて腐らせる心配もありません。売る側も価格競争にならない、買う側もお得ということで、こうしたカット野菜なども「デフレ対策商品」です。
同じ流れは私が専門とする生産財業界にもあります。
トラスコ中山は以前から様々な小口パックを売り出し、工場マーケットからは好評を得ています。しかも「ネジ」や「溶材」など、機械工具業界のお隣のマーケット、いわゆる“鋲螺業界”“溶材業界”が「専門的・コスト重視」で扱っていたものを、「汎用的・利便性重視」で扱ったわけです。
この様に、いわゆる市場縮小期になると自分の業界の「お隣の業界」に目を向けることが経営のセオリーになります。
例えば部品加工において、これからの顧客のニーズは「調達代行」になります。なぜなら円安でグローバル企業は活況になっており、しかもリストラでベテランが減りましたから構造的な人手不足です。
そうすると顧客のニーズは、「鉄もステンレスも樹脂も、加工は同じ業者に投げて頼みたい」場合によっては「ベアリングやカラーなど要素部品もグロスで調達してほしい」というニーズです。
また以前のレポートにも書きましたが、500万円以下のFA設備(=簡易FA)も同じことです。500万円以下の省力化設備は、普通のセットメーカーは請けたがりません。なぜなら、この価格帯だと設計費が出ないからです。従って、普通のセットメーカーが請けるのは平均して700~800万円以上の設備からです。
ところが今、国内工場で最もニーズのある案件は500万円以下です。なぜならこの予算なら、確実に1年で償却することができるからです。
ところが前述の通り、500万円を下回る様な簡易FAの案件を請けてくれるきちんとした会社が無い結果、こうした案件は「個人業者」に流れているのです。
つまり見方によっては完全に非競争の「空白マーケット」であるといえます。
この様にお隣の業界をよく観察すれば、「デフレ対策商品」のヒント、あるいは「空白マーケット」が転がっていることが多々あるのです。
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