前回述べた「デフレ対策商品」は、ただ自社の利益を削って安くする訳ではありません。
その良い例がQBハウスです。普通、大人の散髪は4000円近くしますが、QBハウスなら1000円です。
ところが普通の散髪屋だと1人のお客に60分かけるところを、QBハウスは10分で終わらせてしまいます。そうすると、1時間あたりのチャージはQBハウスの方が高くなりますから、こちらの方が高収益ということになります。
お客が得をし、自社も儲かるという商品・サービスこそが本当の意味での「デフレ対応商品」です。
これは一般消費者向けビジネスだけでなく、生産財ビジネスについても同じことが言えます。
例えば私の顧問先の某機械加工業は、長さが2mを超える様な長尺材料の加工を得意としています。普通、こうした長い材料を加工する際は「門型マシニングセンタ」という高額な大型工作機械を使用することになりますから、1時間あたりのチャージも高くなります。
ところがその某社は、長尺材料の中でも幅の狭いものだけに限定して仕事を請けているため、門型マシニングセンタよりも安価なフライス盤をロングストロークタイプに改造した工作機械で加工が可能です。
その結果、門型マシニングセンタの半分以下しか機械チャージがかかりませんから、当然のことながら価格競争力がある上に儲かります。
特に昨今の生産財業界においては「最先端技術」以上に、「安くモノをつくる技術」の方が重宝される様です。
例えば先日、部品加工業経営研究会2014年1月度定例会がありました。その際の特別ゲスト講師は、同時5軸加工の分野では日本でもトップクラスの技術を持つ、株式会社井上模型製作所 代表取締役 井上 佳宣 様 でした。
↓↓↓特別講演の様子
https://factory-business.com/blog/661/
井上社長曰く、同時5軸加工などハイエンドな技術も必要だが、それ以上に「安くモノをつくる技術」が必要だと言われます。
最初に同社が手がけたのは「海外調達」でした。中国やベトナムで協力工場を開拓して、加工の仕事を海外に委託するのです。
ところが驚くほど品質が悪く、新興国の加工業者は「加工屋ではなく材料屋」として、今では見ています。つまり材料の1次加工レベルの精度しか期待しない、仕上げは国内で行う、ということです。
その結果、同社の中でも「海外調達」品の売上比率は全体の10%くらいしかないそうです。
そこで最近では、設備投資を工夫する様にしている、といいます。
例えば手間のかかるバリ取りを、中古のショットブラストを購入することで短時間に仕上げます。また、やはり中古のワイヤカットを多数導入して、機械加工の仕事をできるだけワイヤカットに置き換えて夜の間にフル稼動させる、といったことです。
こうした「デフレ対策商品」を開発する手法として、
1)本当に必要な本質的機能だけに絞る
2)自社の長所を軸に価値を維持して固定費を下げる
3)人が働かない時間(夜・休日)に設備を稼動させて時間を稼ぐ
という3つの視点がある様です。
これからますます、「安くて良いモノ」でなければ売れない時代になります。
「デフレ対策商品」の開発こそが、中小企業経営者にとって最も重要なテーマとなるでしょう。
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