さらに法人営業の世界にはもう1つの空白マーケットがあります。
それが「クジラ市場」です。「クジラ市場」というのは前回のコラムでお伝えした「雨ざらし市場」の対極で、誰もが「ガードが固くてどうせ受注できないと思い込んでいる大手企業の川上部門」のことを指します。
例えば京都府の長岡京市に木村製作所という従業員30名の部品加工業(鉄工所)があります。部品加工業というのは、親会社から支給される図面の通りに、文字通り材料を加工するのが仕事です。その下請け的性質から価格競争になり易く、実際同社も以前は価格競争に苦しんできました。そこで同社では自社の「価値」を本当に認めてくれるのは大手企業の設計・開発部門であるとターゲットを定め、そうした設計者を対象としたソリューションサイトを開設しました。同社のサイトには、どういう設計を行なえば効率よく加工が行なえるのかというポイントが、細かく網羅されています。
そして同社のサイトは設計者の間で大きな反響を呼び、多い月には数百件もの資料請求が同社に寄せられました。
また木村製作所が開催する設計者向け技術セミナーには、日本を代表する様な大手企業がわざわざ同社にまで足を運び、40名入れる同社のセミナールームはいつも満席です。もちろんこれらセミナーの参加客は全て新規顧客です。この様に同業他社の鉄工所がひたすら「機能(=短納期・小ロット・高品質)」を購買・資材部門(=川下部門)にPUSH型営業(=こちらから売り込む営業)する中、木村製作所は「価値(=設計段階からの最適化)」を設計・開発部門(=川下部門)をPULL型営業(=こちらから売りこまない営業)で大きな成果を上げているのです。
前回のコラムでお話した「雨ざらし市場」は、通販サイトや通販カタログなど比較的大きな投資が必要なのに対して、この「クジラ市場」の攻略は比較的小さな投資で済みます。ですから多くの中小企業はこの「クジラ市場」を狙うべき、と言えるでしょう。
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