アベノミクスでデフレ脱却とは言われていますが、根本的に先進国は生産過剰であり、当面はデフレが続くものと経営的に考える必要があります。
事実、現在のヒット商品は全てデフレ対応商品です。
例えば住宅業界で大きなブームの「ローコスト住宅(コンパクトハウス)」などは典型的なデフレ対応商品です。従来の常識では一戸建てを建てるのに、土地別の注文住宅で数千万円が基本でした。そうした相場に「1000万円未満」の価格設定で大ヒットしているのが前述のローコスト住宅なのです。
また、マスコミでも話題の「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」は、食材は高級レストランのまま、ただし立ち食いというオペレーションで低価格を実現しています。
ローコストに高級レストランの味が体験できるという、これもデフレ対応商品です。
また、以外と思われるかもしれませんがディズニーランドや星野リゾートもデフレ対応商品と言うことができます。
「ディズニーランドは入場料も高いしオフィシャルホテルも凄く高いじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし今やディズニーランドは同じ遊園地と競合していません。ディズニーランドが競合しているのは海外旅行やリゾート地です。従って海外に行く費用や、国内高級リゾート地に行く費用対満足度で比較すると割安なのです。
だからデフレ下で過去最高の利益を出すことができているのです。
また同様に、デフレ下で過去最高の利益を出している星野リゾートも、競合するのは加賀屋など超高級旅館です。星野リゾートの宿泊施設は一般の宿泊施設と比べると高いですが、こうした超高級旅館よりも安い価格帯で同様の満足度が得られるところに、業績好調の要因があるのです。
こうしたデフレ対応商品は、生産財業界にも波及しています。
例えば「簡易FA」です。
従来は自動化設備といえば数千万円から、というのが相場でしたが、最近では500万円を下回る様な簡易的な自動化設備、つまり「簡易FA」が設備投資の中で目立ちます。
例えば某自動車メーカーの場合でも、数年前に2000万円で入れた設備と同じ用途の設備を、今は500万円程度の予算で企画しています。その代わり、完全無人化にはせず派遣作業者を1~2名は従事させる仕様とするのです。
完全な無人化にはしないけども、スキルやノウハウの無い作業者でも高度な作業が行える、文字通り「簡易FA」です。
私が現役でFA設備を売っていた十数年前は、「500万の設備も5000万円の設備も手間隙は一緒」「数百万円の設備を請けると儲からない」と言われていました。
しかし時代は変わりました。従来の1/2~1/4の価格で、いかに本質的に同等の価値を提供できるか、ということが時流なのです。
余談ですが、今は仕事の無い弁護士が多いといいます。一時期の法科大学院の乱立と司法試験の合格者を増やしたことで、弁護士は供給過剰です。今や年収200万円に至らない弁護士が山の様にいる、と言われますが、そうした中でも儲けている弁護士は離婚訴訟に力を入れている、といいます。
かつて弁護士の世界でも、離婚訴訟は手間ばかりかかって儲からない事案の代名詞だったそうですが、今は弁護士にとって有力商品の一つです。この世界も昔の価値観を切り替えられるかどうかが成功のポイントの様です。
生産財業界でも従来の価値観を切り替えて、この簡易FAに積極的に取り組んでいる生産財メーカーは、仕事を抱えてそれなりに利益を出しています。しかし従来の高額設備にこだわる生産財メーカーは全般的に不調な様です。
デフレ対応で利益が出るビジネスモデルを考えることこそ、今の時代に最も重要な経営者の仕事と言えるでしょう。
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