日本は人口が減少して少子高齢化が進み、今後の経済成長は見込めない、という意見があります。ところが世界の先進国を見ると人口が減少しているにもかかわらず、経済成長を遂げている国はいくらでもあります。
ここで、人口増減と同じくらい重要な概念が人口動態です。人口減少下の社会においては、この人口動態に目を向けていく必要があります。例えば1946年にベビーブームが始まり、1950年代には玩具やベビー用品の急激な需要を生み出しました。その後1960年代になるとティーンエイジャーの文化を創り出し、この世代は現在55~65歳を迎えています。
その結果、今成長産業となっているのが医療・介護といったヘルスケア分野です。事実、私がコンサルティングを行なっている部品加工業の世界でも、医療機器分野は大きく伸びています。
例えば日本の製造業出荷高は、ほとんどの産業でリーマン・ショック以前の水準に未だ戻っていません。その中で、出荷高がリーマン・ショック以前の水準を越えている数少ない業界が医療機器分野です。
またアメリカのシリコンバレーでも、今最も注目されている分野の1つがヘルスケアです。アイフォンと連動したリストバンド型の万歩計FuelBandや、歩数・距離・消費カロリーだけでなく睡眠サイクルまでモニタリングできるFitbitやUpなど、ITベンチャーがこぞってヘルスケア分野に参入してきています。
今後、先進国ではヘルスケア産業が生み出すGDPが、製造業全体の生み出すGDPに肩を並べると予想されています。
つまり医療機器・介護機器関連市場は生産財マーケットの中でも攻めるべき市場です。
同じことが中食産業にも言えます。
ここ10年間にわたる所得減の影響により、外食産業は市場全体が7%縮小、金額にして1兆円もマーケットが減少しています。
ところが「中食」と言われる、いわゆる弁当・惣菜マーケットは、この15年間で3兆6000億円から5兆9000億円と、60%以上も市場が成長しています。
こうした中食市場の成長を受けて、例えば某製麺装置メーカーなどは過去に例が無いほど受注残を抱え、その協力会社の部品加工業などもこなしきれないほどの仕事を抱えています。
今後の少子化による核家族化・さらに所得減による共稼ぎ世帯の増加により、こうした中食マーケットはますます伸びるでしょう。
従って関連する食品機械メーカー・包装機械メーカー等も攻めるべき市場であるといえます。
人口増減だけに目を向けると暗いムードになってしまいがちですが、人口動態に目を向けると、そこには多くのビジネスチャンスがあるのです。
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