今、注目される3Dプリンタのパイオニアとも言える会社が、新横浜に本社・工場をおく㈱ジェイ・エム・シーという会社です。
同社は昨今の3Dプリンタブームが起きるよりもかなり早く、いわゆる光造形が日本に入ってきた黎明期に、RP(=ラピッド・プロトタイプ)技術に取組んできました。
同社の外観は駅前のおしゃれなオフィスビルですが、中には光造形の3Dプリンタや粉末方式・ノズルジェット方式など、11台もの本格的な3Dプリンタを設備しています。
こうした3Dプリンタは3次元データの一種であるSTLデータを元に三次元出力されますが、同社がユニークな点は同じデータを異なる設備で三次元出力を行い、そのワークを比較することができる、ということです。
同社の成長は今後の3Dプリンタ技術の普及を予想させるものです。リーマン・ショック前には従業員17名で売上3億4000万円であった同社の年商は、昨年は売上6億円、今期は従業員35人で8億5000万円の売上を見込みます。
5年で2倍以上の成長を遂げると同時に、一般的な受託型製造業の2倍以上の生産性を同社は生み出しています。
同社は様々な意味でユニークです。
まず同社代表取締役の渡邊 大知氏は学校卒業後、5年間をプロボクサーとして過ごしました。その後、父親が経営する保険代理業の会社に入社した後、縁あって試作事業を行なう様になり、現在の事業に至ったといます。現在、渡邊社長は経済産業省の有識者委員会の委員も務めるなど、文字通り日本の製造業を代表する1人です。
また同社は従業員35名のうち10名が営業社員です。
今の時代、業績が良い製造業の共通点は営業力があることです。例えば絶対に緩まないネジで知られる東大阪のハードロック工業も、従業員40名の時に営業社員が8名いました。
またアルミ加工で日本一と言われる京都の山本精工も、従業員68名のうち9名が営業社員です。
今や製造業といえども、営業力が業績を左右する時代なのです。
そうしたジェイ・エム・シーによると、しばらくは3Dプリンタのメイン材質は金属よりも樹脂であろうと言います。
その理由はコストです。
金属を1個から3Dプリンタで作ろうとすると、どうしてもコスト的に割高になってしまいます。それよりも鋳型をローコストに3Dプリンタで製造した上で、小ロット・高精度鋳型で鋳造を行なった方がトータルで割安だと同社は方向性を出しています。
そうしたこともあり、同社は最近になって鋳物会社をM&Aして長野県に鋳物工場を立ち上げました。そして今後軽量化ニーズで需要が見込まれるマグネシウムやチタン鋳物の受託を開発する、といいます。
一部では苦境が伝えられる国内製造業ではありますが、私たちが知らないところで、この様な新しい技術の波が生み出されていると同時に、成長企業もあるのです。
船井総研が主催する毎年恒例の「先端町工場視察セミナー」ですが、来年は2014年3月7日(金)に実施予定です。
また視察先企業の1社が、今回ご紹介した㈱ジェイ・エム・シーとなります。
アメリカの世界的重電メーカーであるGE(ゼネラル・エレクトリック)社は、これから10年間で使用部品の2割を3Dプリンタによる生産に置き換えていく、といいます。その理由は、人件費に左右されるモノづくりから決別することにあります。
つまり製造業の本質的第三次産業化です。
ぜひ本視察セミナーで、今後の3Dプリンタ技術と生産技術のトレンドを掴んでいただきたいと思います。
製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る