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活況の自動車産業・IT産業と、その実情

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10月に入ってから市況に大きな動きが出てきた様です。

先週、三重県の私の顧問先に伺ったところ、自動車関係のセットメーカーに仕事が突然入り始め、中には来年の秋まで仕事がいっぱいで受けきれない、という会社まででてきました。

「片山さん、どこか自動車関係で実績のある良いセットメーカーを紹介してもらえませんか?」と、その経営者から言われたほどです。

同じことが愛知県でも見られます。やはり自動車関係のセットメーカーに仕事が急激に集まり、人が足りなくて対応しきれない、という声をよく聞きます。

ただし、これらは全て海外向け設備案件の話ばかりです。

前にもこのレポートで書きましたが、国内における自動車産業は年間600万台の需要に対して年間1000万台の生産、そして年間1500万台の生産能力という、明らかにオーバープロダクションの状態です。

それに対して北米自動車マーケットは、今年は年間販売1500万台を越える、といいます。もともと北米の自動車マーケットは年間1500万台の市場と言われてきましたが、リーマン・ショックの際には年間1000万台を切り、ずっと1200万台~1300万台の低水準で推移してきました。

ところがここにきて、シェール革命によるガソリン価格の低下で、北米で自動車が売れ始めているのです。

言い換えれば、北米の自動車マーケットが適正水準に戻ったことが自動車産業活況の理由です。

またIT業界も一部で活況をみせています。例えば某大手SEMメーカーは過去最高の業績に近づくレベルで受注がつみあがっているといいます。また某ラップ盤メーカーは中国から4000台もの内示を受けたともいいます。

ただしこうしたITの活況のその先は全て基本的にスマホ需要であり、また台湾TSMC、韓国サムソンといった特定の会社がマーケットです。特に台湾TSMCはアメリカのクアルコム、テキサスインスツルメンツといった大手半導体メーカーの製造委託先であり、世界中から電子部品の製造受託が集まっている会社です。

従ってIT業界は今後、今まで以上に市況の波が激しい業界になることが予想されます。理由は前述の通り、世界レベルで寡占化が進んでいるからです。

また前からこのレポートでも述べている通り、今、日本では60年に1度の産業構造の変化が起きています。

それは今まで生産財マーケットを牽引してきた「自動車」「電機」「IT」が凋落し、その代わりに「医療機器」「エネルギー」「社会インフラ」「航空機」「三品産業(=食品・化粧品・医薬品)」がこれからのマーケットを牽引する、ということです。

こうした動きは既に欧米先進国では明確に起きていることです。

例えばかつてパナソニックがベンチマークしていた欧州のフィリップス社は、この10年間で事業内容が完全に変わりました。

<10年前のフィリップスの事業内容>

医療機器 30億ユーロ

照明 49億ユーロ

家電 167億ユーロ

半導体 61億ユーロ

電子部品 45億ユーロ

その他 27億ユーロ

合計 379億ユーロ

<現在のフィリップスの事業内容>

医療機器 89億ユーロ

照明 76億ユーロ

家電 58億ユーロ

半導体 -撤退-

電子部品 -撤退-

その他 3億ユーロ

合計 226億ユーロ

この様に医療機器を3倍近くに伸ばし、またLEDや省エネ蛍光灯など産業照明を1.5倍に、逆に家電は高付加価値製品に1/3ほどに集約、ITからは完全撤退して現在では世界を代表するエクセレントカンパニーに復活しました。

同社のこの10年間の構造改革には、日本企業もおおいに見習うべき点があるでしょう。

ただし同社の売上は6割前後に減少しています。また従業員も4万人から2万人に削減しました。

言い換えれば、マス・プロダクションの産業構造から、高付加価値なハイ・プレシジョンの産業構造の変化によって、プレーヤーの数が半分になったことを意味します。

事実「自動車」「電機」「IT」のマーケットに対して、「医療機器」「エネルギー」「社会インフラ」「航空機」「三品産業」のマーケットは、今後の成長性を加味しても6割~半分の市場規模しかありません。

目先の動きに対応することは大事ですが、こうした中長期的な動きも踏まえて、自社の事業内容を見直していくことが必要な時代なのです。

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