片山和也の生産財マーケティングの視点【生産財営業も人間心理】
ここ最近、特に中小製造業の経営者の方からの経営相談がとても多い
です。
確かに円安効果によってパナソニックやシャープも、この第一四半期
は黒字になり、北米の自動車需要も堅調です。
しかし根本的には昨年の9月から不況は続いていますし、同じ業界の
中でも好調な会社と不調な会社の差が激しいのが、現在の市況の特徴
です。
また、大手企業も従来の系列を維持できる余裕も仕事量もありません。
逆に系列の協力会社に対して厳しいコストダウンを要求することが、
大手企業にとっての原価低減の有効策になっています。
中小製造業も自社で営業力を持たない「従属的下請け」なのか、自社
で新たな顧客を創造する能力を持つ「パートナー的サプライヤー」に
なれるかで、収益性は全く異なるのです。
経営相談の際にはそうした背景を説明して、マーケティング・システ
ムの構築をご提案しますが、相手の経営者の方によっては「しかし、
新規開拓をしても、今と同じ様に価格勝負にしかならないのではない
か?」「その新規顧客にしても、すでに取引業者がたくさんいるので
はないか?」と言われる方も多くいらっしゃいます。
私はこうしたご質問に対して、次の3つの答をお伝えする様にしてい
ます。
1つは、何でも良いから新規開拓をしよう、と言っているのではなく、
自社と「価値観」の合う新規顧客を探しましょう、ということです。
製造業の世界でも、本当にその会社によって価値観は大きく異なりま
す。
例えば日本を代表する自動車部品メーカーのデンソーは、下請けであ
る協力会社からの「VE・VA提案」を積極的に奨励しています。
「VE・VA提案」とは、設計段階からのコストダウン提案のことで
す。つまり、ただ安くモノを買うのではなく、どうすれば安くつくれ
るのか、という提案をデンソーは求めているのです。提案重視、これ
がデンソーの価値観です。
それに対して、協力会社からの「VE・VA提案」は一切受け入れず、
とにかく決められたモノを安く売りなさい、というコスト重視の価値
観の会社が、破綻する前の米国ゼネラル・モータース(GM)です。
この様に、同じ自動車業界の大手企業においても、会社によって価値
観が全く異なります。どちらの会社と付きあうべきなのか、それは
「価値観」が同じ会社であるはずです。
2つめに、こちらから売り込む「PUSH型営業」ではなく、相手か
ら問い合わせが来る「PULL型営業」を、営業の中心に据えましょ
う、ということです。
こちらから売り込むのと、相手から問い合わせがきてそれに対応する
のとでは、相手のこちらへの態度がまるで違うのは自明の話です。
そして3つ目に、新規開拓は「タイミング」であり「確率論」である、
ということです。
当然のことながら今どき、例えば金属加工の取引先が無い大手工場な
どありえません。
しかし、例えば取引先の下請けが経営的に厳しくなり、その結果サー
ビスレベルが落ち、不満を抱いている大手工場は存在するでしょう。
あるいは大手工場において、前任者とはうまく人間関係を気づいてい
た下請けの会社が、その後任の若い担当者とは人間関係がかみあって
いない、というのもよくある話です。
こうした状態の大手工場の担当者の前に、新たな魅力的なサプライヤ
ーが現れたらどうでしょうか?取引が切り替わる可能性は十分にあり
ます。
船井総研では、生産財業界において、引き合いから継続的取引に至る
確率は3%であると考えています。
ということは、100件の引き合いを発生させれば、3件の継続的取
引先を獲得することができます。
例えば1つのホームページで毎月20件の引き合いが来るのであれば、
3つのホームページをつくれば、毎月60件の引き合いが来ることに
なります。そうすると毎月1~2件の継続的取引先ができる計算にな
ります。
この3%という確率の根拠は、
・Aランク新規客発生率・・・25%
・TELアポ成功率・・・90%
・訪問・宿題獲得率・・・50%
・宿題の商談化・成約率・・・30%
であり、これら全プロセスの確率を掛け合わせると、3%になるわけ
です。
そして、この各プロセスの管理を行い、上記確率以上を前提にPDC
Aを回していくことが、船井流マーケティングの前提となります。
この様に、「価値観の合う顧客と付きあう」「こちらから売り込まな
い」「商談発生・成約を確率論として捉える」という3つの考え方が
必要です。
そして、これら3つの要素のベースは、やはり人間心理です。
人によって価値観は違いますし、こちらの行動・態度によって相手の
見る目も変わります。
さらに人間誰しも、前任者のやり方をただ踏襲するのではなく、優秀
でやる気がある人ほど、新しいこと(=新しい協力会社)にチャレン
ジしたいものなのです。
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