片山和也の生産財マーケティングの視点【2013年夏の全国の生産財市況】
今週はお盆ですが、私は12日・13日と現場でコンサルティングを
行っていました。
12日に伺った都内の機械工具商社では、この2~3ヶ月好調だとい
います。地域的に先端産業の試作品関係が多いエリアですが、医療機
器・航空宇宙を中心に仕事が増えているといいます。
ただし10年前とは売れている商品がガラッと変わっていて、今や売
上の半分が「受託加工」「工事」であり、10年前に売れていたナシ
ョナルブランド商品の比率は大きく下がった、といいます。
また13日に伺った東北の機械工具商社も5月以降は好調で、明らか
に円安効果が出ている様です。IT関係もWindowsがXPに切
り替わることへの特需、またウエア径が350mmから400mmに
切り替わることに関連して、パイロットプラントなどの仕事が出てい
る様です。
多少の動きは出ているものの、多くの経営者の方が市場に対して慎重
な見方は崩していません。
例えば北米市場が好調だといいますが、実際に北米在住の人に話を聞
くと、その実感が無いといいます。
今、北米市場は自動車が好調だといいますが、決して好況だから自動
車が売れているわけではありません。現在、北米には1億5000台
もの乗用車があるといわれます。
と言うことは、10年に1度買い換えるとして、毎年1500万台の
乗用車需要が生まれる計算になります。事実、北米の乗用車市場は1
500万台市場と言われていました。
ところがリーマン・ショック直後はこれが900万台に激減し、さら
にここ3~4年は1200万台から1300万台で推移してきました。
つまり、買換え需要がずっと抑えられてきたわけです。
そしてここにきてシェール革命によるガソリンの値下がりにより、一
気に抑えられてきた買い替え需要が顕在化した、というのが北米市況
の実態の様です。
同じことが日本国内にもいえます。日本国内の場合、自動車は600
0万台あると言われ、年間の市場規模はだいたい600万台です。
ところが、日本国内で年間何台の自動車がつくられているかというと、
だいたい1000万台です。
つまり今後、自動車の現地生産の流れがより加速することを考えると、
国内の自動車市場はさらに減少する、ということです。
さらに、国内の自動車生産能力は1500万台分あると言われ、明ら
かに設備過剰です。
また来年4月に導入が検討されている消費税の増税、今年行われた設
備投資補助金による“需要の先食い”の振り戻しを考えると、普通に
考えれば来年はより厳しい市況が予想されます。
ただし良い材料はあります。
シェール革命によるアメリカの輸出政策で、ドル高・円安の基調はし
ばらく続くでしょう。多くの輸出企業の為替設定は85円ですから、
95~100円の水準で為替相場が続けば、大手企業は十分な収益を
上げることができるでしょう。
中小企業について言えば、今、業績が好調な会社の共通点は、
(1)顧客を創造する力を持っている
(2)企画力・営業力が高い
(3)「顧客代行」を行い“価値”の訴求を行っている
(4)外部資源を有効に活用している
(5)PDCAがきちんと回っている
といったことが上げられます。
特に大切なことは「顧客代行」です。
これは、本来は顧客がすべきことを、こちらが代行するビジネスモデ
ルを指します。
例えば「顧客代行」の代表的なものに、部品調達代行が挙げられます。
大手企業の社内設備などは、完成図の他に数百枚を超える様な部品図
から構成されます。
こうした数百枚を超える部品図を、最適な外注先に割り振って見積り
を取得し、納期管理を行うのは本来顧客企業の資材部の仕事ですが、
こうした見積り・納期管理業務まで一括して受託するのが部品調達代
行です。
特に今の時代は企業間格差が激しい時代です。ヒマな会社は本当にヒ
マですが、忙しい会社はこなしきれないくらいの業務を抱えています。
こうした忙しい会社には「顧客代行」のニーズが必ずあります。
もちろん「顧客代行」を行うからには、それだけの信用力・信頼獲得
力、言い換えればその会社のブランド力も求められます。中長期的に
は社員教育が重要ですが、短期的には営業組織・担当者配置の見直し、
Webなどの集客ツールや営業ツールの見直しが必要でしょう。
自社も、いかに「価値」を売っていくのか、つまり「顧客代行」をい
かに行っていくのか、を真剣に考えるべきでしょう。
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