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片山和也の生産財マーケティングの視点【米国における航空機産業と医療機器産業の最新事情】

先週の6月16日から6月22日までの約1週間、アメリカ医療機
器・航空機産業視察セミナーに行っていました。
今回はその内容についてお伝えしたいと思います。

↓↓↓視察セミナーの画像はこちらから

1)航空機産業はやはり成長産業
コネチカット州の航空機産業4社を視察しました。そのうち1社がシ
コルスキー社という世界有数のヘリコプターメーカーです。
映画「ブラックホーク ダウン」のブラックホークを製造している会
社ですが、同社の業績は2003年の2000億円から、2011年
には7000億円と脅威の成長を遂げています。8年で3倍以上の成
長を遂げていることになります。

2)新たな情報を求めるシコルスキー社
今回は日本から中小部品加工業が10数社訪れるということで、シコ
ルスキー社としても大きな関心があった様です。そうした中、今回の
視察参加企業はシコルスキー社から技術プレゼンを求められ、参加各
社は約10分間の持ち時間でプレゼンを実施しました。
プレゼン会場には三菱商事、ジャムコ(日本の大手航空機資材メーカ
ー)も同席し、貴重な機会をいただきました。
シコルスキー社としては前述の業容拡大の中、世界中にサプライチェ
ーンを構築したいというニーズがある様で、そうした中で日本のジョ
ブショップ(=部品加工業者)に関心を持った様です。

ちなみに、昨年のドイツ視察の際もベルリン通商代表からアプローチ
がありましたが、日本企業の経営者が十数人も視察に訪れる、という
のは先方にとっても大きなインパクトがある模様です。

3)民需と防衛の垣根がないアメリカ航空機産業
アメリカの航空機産業は民需と防衛の垣根がありません。むしろ防衛
のウエイトが高く、従ってセキュリティーも非常に厳しく、今回のシ
コルスキー社視察は、同社の日本総代理店である三菱商事様のご好意
によるものです。
例えば外国人がこうした会社に立ち入る場合は、必ずパスポートが必
要です。現地で同社に工作機械を納入している日系メーカーのサービ
スも、もし日本人の場合はパスポートが無ければ工場に入れません。

4)私服OK、帽子も無し、自由な雰囲気の最新鋭工場
シコルスキー社の工場内は写真撮影厳禁。加工工場から組立工場まで
全ての工程を視察しました。
加工工場はともかく、組立工場の作業者は全員私服。短パンにTシャ
ツといういでたちで、帽子もかぶっていません。そうした自由な雰囲
気の中で、最新鋭の軍事ヘリコプターが組み立てられている姿は、日
本人の感覚では非常に不思議な感じでした。

5)中小ジョブショップは腕次第
また4社目に視察したMTM社は、従業員10名のジョブショップ
(=町工場)でした。同社は創業者(現社長の父親)がP&W社(世
界3大ジェットエンジンメーカーの1つ)出身であり、そうした人脈
を元に加工事業を展開している。
社長のビル氏は非常に誠実な職人で、彼の人柄と仕事への姿勢が評価
されて同社は非常に忙しいとのこと。
ISOなどの認証規格は取らないのか?という質問に対しては「費用
がかかるから取りたくない」とのこと。さらに「規格から良い製品は
生まれない、良い人間から良い製品が生まれる」と熱く語っていまし
た。
同社はP&W社だけでなくシコルスキー社他とも取引しており、航空
機産業が集積しているコネチカット州、という地場であるという地の
利も同社の強みの様です。

6)北米は組合が強く製造業の工場は敬遠、工場は南部へ流れる
コネチカット州など、北米は組合の力がいまだにつよく、製造業の工
場はケンタッキーなど、南部につくられる傾向が強いそうです。
例えば以前、コネチカット州にあったGMコルベットの工場では、庭
の芝刈り職人が年収800万円もの収入を得ていたとのこと。
アメリカでの工場立地を考える際、この組合(=ユニオン)の存在を
抜きにして語ることはできない様です。

7)MD&Mはサプライヤー発掘の為の展示会
次にアメリカ最大の医療機器サプライヤーの展示会、MD&Mについ
てです。
普通の展示会は完成品メーカーが自社の最新商品・技術を発表する展
示会ですが、MD&Mは性質が異なります。
MD&Mは、サプライヤーを発掘したいバイヤーの為の展示会、と言
うことができます。従って出展している会社も中小ジョブショップが
多く、凝ったブースはほとんど無く、自社のワークを並べているだけ、
といったブースが多かったです。
ただし訪れている人は目的を持ってサプライヤーを探している人(=
バイヤー)が多く、そういう意味では出展効果の高い展示会と言えま
す。

8)アメリカでも医療機器は成長産業
アメリカでも中小ジョブショップにとって、医療機器産業は成長産業
であり、各社参入を考えている業界の様です。
例えばある金型業者は「医療機器産業の仕事はハイクオリティであり、
自社に向く業界だ」と力説。カナダの中小ジョブショップ(従業員1
0名)の会社は、会場にNC旋盤を持ち込んでデモ加工を行う、とい
った熱の入れようでした。

9)日本企業の出展が目立ったMD&M
MD&Mは、毎年フィラデルフィアで開催されるMD&M EAST
(今回視察の展示会)と、カリフォルニア州アナハイムで開催される
MD&M WESTがあります。EASTは日本企業の出展は限られ
ていた様ですが、今年には会場にも日本人の姿が多く、また日本企業
の出展も増えた、といいます。
ちなみにこのMD&M、来年は日本にも進出してくるそうです。

10)アメリカの市況
アメリカの市況については日本と同様、「これから良くなるので
は?」という希望的観測がもたれている状態です。
シェールガスについて言えば、実はシェールガスが取れすぎてガスの
価格が下落しており、シェールガス採掘については少し下火になって
いる、とのことでした。
ガソリン価格もどちらかといえば上昇の傾向で、現在のところアメリ
カのガソリン価格は日本のそれとほぼ同じです。つまり相対的にアメ
リカのガソリン価格は高い、ということであり、まだシェールガス革
命の恩恵が一般市況には行き渡っていない、そんな状態でした。

以上、航空機産業については、まだまだ成長が見込めることを肌で感
じることができました。
またMD&Mは、日本の中小部品加工業が米国で市場を切り開くのに
際して、有効な展示会だと感じました。

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