片山和也の生産財マーケティングの視点【動き出した?生産財の国内市況】
5月のゴールデンウィーク明けくらいから、国内の生産財業界も動き
が見え始めた様です。その中心は自動車業界です。
新聞でも伝えられていますが、北米での大型車増産に合わせてか、こ
の6月の東海エリアは活況でした。特にティア1あるいはティア2ク
ラスの工機部門を持つ部品メーカーでは、海外向け生産設備の案件が
多く聞かれました。
また、IT業界向けから自動車業界向けに舵をきったファナックのロ
ボドリルは、今年初めの月産600台を切っている状態から、ここ数
ヶ月で月産2000台まで回復してきたといいます。
自動車以外の分野でも、クボタ関連の北米向けバギーの部品が動いて
いる様で、円安効果と北米の景気回復を感じさせる動きになってきま
した。北米市場の場合、こうしたバギーや芝刈り機用エンジンなどが
動くと、景気回復の傾向があります。
ただし、全ての会社の市況が回復しているわけではありません。新規
開拓や深耕開拓など、今まで営業面で手を打ってきている会社、また
リーマン・ショック後の産業構造の変化に対応できている会社以外は、
いまだ厳しい状況にある様です。
例えば工場の生産設備です。特に大手企業において、従来は外部のセ
ットメーカーに依頼していた設備を、ここ最近は1/3~1/4くら
いのコストで内製するケースが非常に増えました。
その結果、独自技術を持たない中小セットメーカーの大半が苦戦して
います。
これはかつての金型業界と同じです。金型業界が厳しくなった理由も、
やはり大手製造業の金型の内製化です。これから中小セットメーカー
は、ますます厳しくなる可能性が高いでしょう。
ところが、そうした設備の内製をすすめる大手製造業にしても、部品
加工は外注しています。セットメーカーにしても設備の仕事を取るだ
けでなく、設計込みで部品加工の仕事を請けるなど、そうしたことも
考えていく必要があります。
今後の時流としては、円安・デフレが進み、また消費税が上がること
から、ますますグローバル展開する大企業が有利な時代になります。
なぜ消費税が上がるとグローバル展開する大企業が有利になるかとい
うと、国内で仕入れた材料で商品をつくった輸出企業は、仕入れた材
料の消費税を還付されるからです。例えばトヨタ自動車は年間100
億円を越える還付金を受け取っていると言われています。
消費税は欧州の付加価値税をモデルにしたものですが、この付加価値
税は元々、輸出企業を間接的に支援する目的で導入されたものだとい
われます。経団連が消費税アップに賛成する背景には、こうした事情
があるのです。
従って中小企業としては、ますます大手優良企業に対する「コバンザ
メ作戦」を展開していくべきでしょう。つまり大手優良企業にベッタ
リくっついて離れない、ということです。
さらにアメリカでシェールガス革命が進むとなれば、自国のエネルギ
ーを高く売りたいアメリカとしては、ドル高誘導を続けるでしょう。
その結果、円安は長期的なものになると私は思います。
さらに原油の1/3以下といわれるシェールガスが本格的に出回れば、
エネルギーコスト・原料コストが劇的に下がるわけですから、デフレ
はさらに進むと考えるべきです。
デフレ時代を乗り切るためにもっとも大切なことは「研究開発型」企
業になることです。
さらに「研究開発型」企業になる手前の段階として、「提案型」企業
を目指さなければなりません。特に設計段階からの最適化やコストダ
ウンが図れるVA・VE提案こそ、大手優良企業が求めるニーズです。
全てのモノづくりが海外に流出する訳ではありません。時流を見据え
て前向きに対処していくことが、経営者に求められることなのです。
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