片山和也の生産財マーケティングの視点【人脈は引き継げない】
普段、私は日々のコンサルティングやセミ中で、「人脈営業ではダメ
です」と申し上げていますが、あらためて「人脈」の有効性に気づか
される出来事がありました。
今年6月の「アメリカ医療機器・航空機産業視察セミナー」の中で、
アメリカ・コネチカット州の航空機関連企業4社にアポを取ろうとし
たのですが、このアポ取りは開催直前まで非常に苦労しました。
理由はこちらの知識不足にあったのですが、アメリカの航空機産業と
いうのは民需と防衛の垣根がありません。民需と防衛が入り混じって
仕事が出ており、すなわちアメリカの航空機産業というのはイコール
防衛ということになります。従ってセキュリティが非常に厳しく、仮
に下請けであっても工場見学など厳禁、ましてや外国人の立ち入りな
ど完全にNG、というのです。
アポの電話を入れても途中で切られるなど、そのガードの固さにまず
現地のコーディネーターが根を上げました。
そこで考え抜いたところ、昔のある人脈で三菱商事に知り合いがいる
ことを思い出しました。
三菱商事はコネチカット州に本社を置くジェットエンジンメーカー
P&W社や、ヘリコプターメーカー シコルスキー社の日本総代理店
です。そこで三菱商事に頼み込み、同社経由でアポを取ったところわ
ずか半日でOKの返事。しかも昼食付、さらに我々(日本の中小鉄工
所)のプレゼンも是非受けたい、という変わり様でした。
やはり人脈の力は強力です。これで2社とアポがとれました。
さらに私の前職の関係で、ヤマザキマザックの元副社長にお願いし、
ヤマザキマザック・コネチカットテクノロジーセンタ視察の了承をい
ただき、さらに現地のユーザーをご紹介いただきました。
これで合計4社のアポがとれ、予定通りの視察となりました。
この様な人脈と同様に高い効果を発揮できるのが、PULL型ビジネ
スモデル(=お客の側からの問い合わせ)の力です。
例えば昨年の春、ドイツ中小製造業の視察セミナーを企画した際の話
です。この時は、このツアーのホームページを見たドイツ・ベルリン
通商部から、ぜひ視察企業団にベルリン通商部から企業誘致を目的と
したセミナーを現地で開催したい、との申し出がありました。
その流れでドイツ現地の中小製造業の紹介をお願いしたところ、あっ
さりと視察先を紹介してくれました。
しかも地元の市長が出迎えてくれ、また地元の新聞まで取材に来ると
いう歓待ぶりでした。
この様に「人脈」と同じくらいに威力を発揮するのが「PULL型ビ
ジネスモデル」なのです。
また「人脈」には一つの大きな欠点があります。
私がコンサルティングで「人脈営業ではダメです」と申し上げている
最大の理由は、人脈は引き継げないことにあります。
例えば現社長の人脈を、次の社長に引き継ぐことはまず不可能です。
中小企業の事業継承の難しさは、この「人脈は引き継げない」ところ
にあります。特に中小企業の多くが「人脈営業」を行っていますから、
人脈が引き継げないということは、営業先も引き継げないことになり
ます。
中小企業では特に、営業力の無い二代目・三代目社長には幹部が中々
ついてきません。今の時代、仕事を取ってこられるか否かがリーダー
シップの面でも非常に重要なのです。
これは中国ビジネスでも同じことです。中国人相手にリーダーシップ
を発揮する際、中国でモノづくりをして日本に輸出するスキームの場
合は、比較的日本人がリーダーシップをとれます。「客先」という蛇
口をこちらが握っているからです。
ところが中国現地にモノを売る、というスキームでは大半の会社が失
敗します。「客先」という蛇口を相手が握っているため、リーダーシ
ップ・主導権が中々とられないからです。
話を戻しますが、今の時代は全ての業界において市場縮小期であり、
既存顧客だけでは事業維持そのものが不可能です。
「人脈」に依存しない、再現性のある顧客獲得ビジネスモデルをつく
ることが、中小企業にとって必須のことです。
とはいえイザという時の「人脈」は必要です。特に中小企業の社長で
あれば、売上の15%くらいはつくれるだけの「人脈」「営業力」は
必要でしょう。
「人脈」と再現性のある「PULL型ビジネスモデル」とのバランス
が、現実問題として中小企業に必要なことだと私は思います。
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