片山和也の生産財マーケティングの視点【不況期は「ターゲティング」か「業態」を変える】
2013年4月も今日で終わりです。今年の年初には「4月くらいか
らは本格的に景気は良くなる」と言われていましたが、実際にはこの
4月の生産財市況は、業界・エリアにもよりますが、おしなべて昨年
対比2割減、といったところでしょう。
事実、この3月の工作機械受注は速報値で903億円、前年同月比で
いくと78.4%です。これで工作機械受注は11ヶ月連続で前年対
比マイナス、ということになります。
ところが銀行などの見方は違います。先日、経営相談で訪れたある地
方の鉄工所(従業員100名)で「景気は悪いですよ」と話をしたら、
そこの社長から「そうですよね!」と、強く同意されました。
その社長によれば、取引先の銀行はどこも「これから景気は良くなり
ますよ」「設備もリースが切れますから、買い換えましょう」と、強
気なアドバイスばかりしてくる、といいます。それで「ウチだけが景
気が悪いのか・・・」と悩んでいた、というのです。
前回のレポートにも書きましたが、政府は何としても今年の景気をよ
くしたい、と考えています。当局から強い規制・管理をうけている大
手新聞社や経済誌・銀行なども当然のことながら、そうした当局の意
向に合わせています。
なぜ景気をよくしたいのか、といえば消費税を上げたいからです。消
費税法案には景気条項という項目があり、景気が改善していなければ
消費税率を上げることができません。ですから、政府もマスコミも一
緒になって、景気を盛り上げているわけです。
ただ、こうした動きもやむをえないと私は思います。日本はOECD
やIMFから、「消費税10%でも税率が低い」「プライマリーバラ
ンスの財政を健全化せよ」と強く圧力をかけられています。
実際、欧米など先進国の付加価値税(消費税)の平均は、約20%で
す。こうした背景があって、国際関係の中で日本も財政を健全化せざ
るを得ないのです。
ですから、経営者が一般マスコミの書いている情報だけで意思決定を
していては会社が潰れます。景気は良くならない、現在の市況の中で
何をどうするのか、ということを腹をくくって決めていかないとダメ
なのです。
例えば前述の鉄工所でいえば、高度な製缶技術を持っていながら、大
手造船・橋梁メーカーの下請けで、コスト競争に苦しんでいます。
造船技術というのは、ほぼ戦前に確立されている技術です。例えば、
いかに最新鋭の船舶とはいえ、戦前の戦艦大和と大きく技術の中身が
違うか、といえば基本技術は同じです。
ところが、業界が変わればこうした図式も変わります。
例えば、現在大きな成長を遂げている医療業界でも、ドラフトチャン
バーやMRI、ガン治療量子線装置など、大物の製缶技術を要する分
野は数多くあります。またこうしたメーカーは、医学については専門
家かもしれませんが、機械加工・板金・製缶技術については充分な知
識を持ち合わせていないケースが多々あります。
かつて福井県の鯖江はメガネの有名な産地でした。現在はこうしたメ
ガネの仕事は大半が海外に移転しました。ところが、メガネの高度な
微細加工技術・難削材加工技術を応用して医療分野に参入した企業は、
みな好業績で多くの仕事を抱えています。また、こうした工場を取引
先に持つ機械工具商社も業績が好調です。
この様に、持っている技術やノウハウは同じでも、目先を変えるだけ
で大きく業績を伸ばすこともできるのです。
また、ルートセールス主体である機械工具商社の場合は、鉄工所機能
を付加して、「工具屋鉄工所」になるべきでしょう。現在の様に市場
が縮小している局面では、地域密着ルートセールス型の会社は、どれ
だけ営業マネジメントを強化しても、業績は上がりません。
事実、どこのエリアでも従来型の機械工具商社は苦戦しています。
ところが「加工」のカテゴリーについていえば、きちんと取り組んで
いる会社はどこも業績が伸びています。1~3人など、家族でやって
いる鉄工所をうまく取り込んで、こうした鉄工所の「営業代行」がで
き、また大手製造業からの「購買代行」ができている機械工具商社は
業績が伸びているのです。
機械工具商社も従来のメーカーブランド品を販売するだけでなく、
「加工」に代表される定価レス商品を売っていくこと、言い換えれば
“業態を変える”ことが必要です。
比較的商圏が広い業種の場合は「ターゲットを変える」、地域密着で
商圏が限られている場合は「業態を変える」ことが、今、必要なこと
なのです。
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