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片山和也の生産財マーケティングの視点【2013年に向けた共通の不況対策】

私は「機械工具商社経営研究会」と「部品加工業経営研究会」と、2
つの経営勉強会を主宰しています。いずれも2012年の振り返りと、
2013年への不況対策・行うべきことについて、会員企業様全員と
確認を行いました。

やはり大切なことは「新規開拓」です。「新規開拓」につながる「マ
ーケティング戦略」「営業戦略」「組織戦略」が求められるのです。
例えば、既存顧客内における売上アップ、あるいは利益アップという
のは言い換えればシェアアップということです。ダウントレンドの中
で、シェアアップは容易ではありません。それぞれの会社が自社の強
いところで、それぞれの顧客の中でポジションを取っていますから、
その激烈な戦いの中で他社のシェアを食っていく、というのは経営的
には並大抵のことではないからです。

その点、「新規開拓」は、B2Bビジネスの場合は「商圏拡大」とい
うことになります。新たな顧客の中で自社の強みが発揮できるポジシ
ョンを取ることで、売上・利益アップを図ることができるのです。
前回のレポートでご紹介した「夢工場」の山本精工様も、10年前は
取引社数40社であったところが、現在では600社にも増えていま
す。まさにそういうことなのです。

こうした「新規開拓」を推進していこうとすると、トップのリーダー
シップと、社員のフォロワーシップ・チャレンジ精神が必要になりま
す。なぜなら新規開拓を実行するためには、普段の業務に対してプラ
ス・アルファの動きが求められます。また部品加工業の場合であれば、
既存顧客からのリピート品をこなす方が楽です。新規で小ロットの慣
れない仕事をこなそうとすると、工数が余計にかかり利益も出ないか
もしれません。つまり、新しい仕事で確実に利益を出そうとすると社
員各々のスキルを上げていかなければなりません。
具体的には「多能工化」「外段取りの推進」「リアルタイム生産管
理」等を挙げることができるでしょう。

特に現在の様な不況のダウントレンドの時代は、「分業」よりも「多
能工化」が求められます。例えば不況下でも業績を伸ばしている星野
リゾートなどは、一般的な旅館が分業体制をひいているのに対して
「多能工化」を進めています。要は1人の人が女将さんもやれば調理
もする、さらに掃除もするといった具合です。これには当然のことな
がら、トップの強力なリーダーシップが必要です。

また、現在拡大が見込まれているLCC(ローコストキャリアー)も、
いわば多能工です。客室乗務員やパイロットが機内清掃等も行います。
このLCCのはしりは、アメリカのサウスウエスト航空であり、同社
は「ビジョナリーカンパニー」で何回も紹介されているグレートカン
パニーです。
サウスウエスト航空はグレイハウンドなど、従来長距離バスを利用し
ていた顧客層にターゲットを合わせ、新規顧客を獲得して業績を伸ば
してきました。既存顧客に対してマイルのサービスを展開し、既存顧
客への囲い込みに注力した大手航空会社は、その大半が破綻しました。
先ほどから述べた様に、ダウントレンドの中で既存顧客だけを攻めて
いても絶対に業績が上がらないことの証明です。
サウスウエスト航空は、トップによる強烈なリーダーシップによって
前述の様な業界では“非常識”ともいえるオペレーションを取り、新
規顧客の獲得に成功しました。既存の大手航空会社は、いわば誰もが
反対しない様な無難な戦略をとり、結果、価格競争に陥り大半が破綻
したわけです。

この様に、不況期を乗り切るためには新規開拓を推進するマーケティ
ング戦略と、社内を一体化させるリーダーシップが両輪で必要だとい
うことなのです。

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