片山和也の生産財マーケティングの視点【気配り力が業績を上げる】
先日ある顧問先にコンサルティングで伺った際、その会社の社長が
「何か暗いな」と会議室の蛍光灯が、いくつか切れていることに気が
つかれました。「先日の大掃除で蛍光灯を外したから接触が悪いのか
な」と社長自ら机の上に上がられて蛍光灯を回して、接触を良くする
ことで点灯させることができました。
その会議室は社長が入られる以前に、多くの社員が使用していたはず
です。私は社長に、「もし、この切れた蛍光灯に気がつい社員がいた
ら、その社員は役員になれますね」と言うと、社長は苦笑されていま
した。この会社は業績好調の優良企業で、社員も100名近くいらっ
しゃいます。そうした立派な会社でも、社員の気配りは社長の気配り
に及ばないのです。
また、社員数が2000人を超えるオーナー系の大手企業の本社に訪
問した時の話です。同社の工場見学をすることとなり、社長が建屋内
を案内してくれました。その時、自動ドアのマットの上に小さな紙く
ずの様なゴミがおちていました。その紙くずを拾い上げたのは社長で
した。やはり、この自動ドアも何人もの社員が行き来したことだと思
います。しかし小さな紙くずに気がついて拾い上げたのは、2000
人クラスの会社でも社長なのです。
接客にせよ、営業にせよ、電話対応にせよ、生産活動にせよ、「品質
向上」「顧客満足」を実現するのは“気配り力”です。“気配り”の
できる社員が多い会社は品質・顧客満足度が高く、その結果として好
業績です。逆に“気配り”が足りない社員が多い会社は、何をするに
も時間がかかり、納期遅延、出荷ミス、見積り対応の不手際、言われ
たこともできない、その結果として業績も振るいません。
こうした“気配り”は突き詰めれば“ホスピタリティー(もてなしの
心)”につながります。ホスピタリティーの高さは日本企業の世界的
な強みです。日本製品はよく過剰品質と言われますが、これは高いホ
スピタリティーを反映したものです。強みは見方を変えると弱みに見
えます。過剰品質の結果としてコストが高い、と捉えてしまうと安易
なコストダウンにつながります。日本人の特性として、欧米的な合理
主義で機能を削りまくってコストを下げる考え方は苦手な様です。
かつて日本の海外通信会社が米国製の海底ケーブルを検討した際、あ
まりに外観が悪いので採用を見送ったことがあるそうです。海底に沈
めてしまうケーブルだから外観は関係が無いかもしれませんが、日本
人の多くは、外観があまりに悪いと「中身もまずいのではないか」と
考えてしまう訳です。
しかし、国際的にもホスピタリティーが求められる分野も多くありま
す。例えばインドのタタ自動車が鳴り物入りで売り出した、30万円
を切る低価格自動車“ナノ”は結局売れておらず、事業そのものが大
赤字です。自動車は人の命が関わるものであると同時に、購入する人
の嗜好性が強く作用するので単純な価格勝負にはならないことが実証
されたと思います。先進国としては「機能」だけが重視されて価格競
争に陥る商品ではなく、「価値」が重視されることで価格競争に陥り
にくい分野を積極的に手がけていくべきでしょう。
いずれにせよ、現在の様な厳しい時代は自社の「弱み」を何とかしよ
うとするのではなく、自社の「強み」を全面的に打ち出していかなけ
れば、競争に打ち勝つことはできません。日本の本質的強みが“ホス
ピタリティー”だとすれば欧米的な合理性だけでなく、気配りの追求
も、業績向上の為に大切な取り組みだと思います。
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