片山和也の生産財マーケティングの視点【気配り力が業績を上げる(2)】
前回のレポートでは「気配り」が業績向上に結びつくことについて、
お伝えしました。あらゆるビジネスにおいて「気配り」は成功要因と
言えますが、“最低限の気配り”とは相手を不安にさせない、という
ことです。そうした意味で、例えば「送られてきたメールには必ず返
信を打つ」「常に連絡がとれる体制にしておく」ということは、最低
限必要なことだと私は思います。
先日、ある顧問先(部品加工業)にコンサルティングで伺った時の話
です。その会社の社長が「営業は携帯電話を会社に置いて帰宅せず、
持ち帰る様に」と話をされていました。同社では営業マンに携帯電話
を支給している様ですが、それを会社に置いて帰宅している人がいる
とのことなのです。
確かに同社の社長が言われる通り、少なくとも営業という職種である
限り、365日24時間連絡が取れる体制にしておくべきだと私は個
人的に考えます。私自身、私の携帯は365日24時間対応します。
今の厳しい時代、仕事とプライベートを分けている様では業績向上は
おろか、生き残ることすら厳しいのではないでしょうか。
私の経験で言えば、常識的な時間帯において“携帯電話の電源が入っ
ていない”“留守電にも切り替わっていない”人で仕事ができた試し
はありません。もちろん、打ち合わせ中にお客さんの前で電話をとる
のは失礼です。着信があれば折り返し電話をかければ良いのです。
私は経験上、常識的な範疇において「連絡がとれない」奴というのは
ロクな奴がいないことがわかっていますから、私自身の部下に対して
は、「携帯に出る」「出られない時は留守電につながる様にする」
「着信があれば折り返す」ことは絶対に徹底しています。
ちなみに、船井総研の場合は携帯電話は会社支給ではなくプライベー
トなものです。通話料も個人持ちです。ですから「プライベートな電
話ですから困ります」と言われる可能性もあります。私はその場合
「なら俺が通話料を出してやるから言ってこい」と言うつもりです。
今のところそうしたことを言ってくる部下はいませんが、管理職であ
れば最低限その程度のリーダーシップ(=部下との信頼関係)は必要
でしょう。
また、その関係先の社長も言われていましたが、常に携帯電話をON
にしておくということは、常にトラブルやクレームが発生しない状態
を自らつくっておく必要があります。私の周りを見ていても、仕事が
できない人、稼げない人ほど電話がバンバンかかってきます。その電
話の中身は何らかの打ち合わせです。つまり、本来こちらから手を打
っておくべきことができていないから、相手から電話がかかってくる
のです。そう考えれば、常に携帯電話をONにしておいた方が全体で
見ると本人のためにもなる訳なのです。
この様に、私が言いたいことは部下や社員に難行苦行を強いる、とい
うことではありません。仕事とは本来楽しいものであり、「仕事=趣
味」の状態に持ってくることが最も仕事においてパフォーマンスが上
がります。アメリカに「PEAK」という経営手法があります。これ
は社員の“承認欲求”“自我欲求”を満たし、仕事を通して“自己実
現”につなげることを戦略的に行う手法です。例えば“奇跡の経営”
と言われるアメリカの通販会社であるザッポス、ブラジルの産業機械
メーカーであるセムコ社は、こうした経営手法を取っています。日本
で言えば樹研工業や未来工業がこれに近いパターンです。
こうした経営手法においては会社は社員を管理することなく、社員の
自主性において最大のパフォーマンスを上げることができます。
ただ、その為には「共通の文化(=カルチャー)」が必要です。組織
理論において、1人のリーダーが管理・監督できる人数の上限は多く
ても15名までです。ところがオーケストラにおいては、指揮者は1
人で150名の人間を動かします。これは“楽譜”という共通言語と
“プロ”としてのマインド、日々の訓練があるから成せる技です。
前述の「連絡が取れる状態にしておく」というのも、カルチャーの中
の1つの例です。
いずれにせよ現在の厳しい市況の中で好業績の会社は、「顧客満足」
と「社員満足」を同時に満たす強いカルチャーを持った会社です。こ
れからの時代、こうしたカルチャーをいかにつくるかが経営者にとっ
て最も重要な仕事になると思います。
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