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片山和也の生産財マーケティングの視点【不況期に必要な3段階のマーケティング】

先日の月曜日、大阪で部品加工業経営研究会を開催しました。全国か
ら機械加工、板金加工、樹脂加工を初めとする加工業経営者の方がお
集まりになられました。
全国的な市況で言えば、8月は低調であった様です。好調なはずの自
動車業界においても、設備投資が振るわないといった発言が多く聞か
れました。しかし実際には各社とも業績は昨年対比110パーセント
前後となっており、実際の足元の数字以上に先行きの見通しなど、マ
インド的な面で「悪い」との印象をもたれている様です。
事実、今回の研究会では経営者の方から「片山さんが想定される最悪
のシナリオは何ですか?」「今度大不況が来るとしたら、どれくらい
続くでしょうか」といった質問が多くされました。

いずれにせよ、現在の様な長引くデフレ下の中で中小企業が考えなけ
ればならないことは「研究開発」です。

例えば、来る9月27日に開催される板金加工業経営革命セミナーの
ゲスト講師を務められる京都の株式会社最上インクスの場合、「フィ
ン」に絞って研究開発に取り組んでおられます。「フィン」はパソコ
ンに代表される電子機器を冷却するために取り付けられています。例
えばサーバーのCPU等は、何も冷却措置をとらなければ、あっとい
う間に100度くらいまで温度が上昇してしまいます。もちろん、そ
んな高温になってしまうとサーバーはオーバーヒートでダウンしてし
まいます。ですから3cm角くらいのCPUの上には、5cm四方の
銅のブロックの様な「フィン」が取り付けられ、さらにその上には電
動の冷却用ファンが取り付けられることで、CPUの冷却を行ってい
る訳です。CPUの上にこの様な「フィン」を取り付けることで、何
もしなければ100度まで上がるCPUの温度を、40度前後に押さ
えているわけです。
この「フィン」の形状や材質を様々変えることで、冷却効率は大きく
変わります。もちろん設計者の立場からすれば、できるだけ小さくて
冷却効果の高い「フィン」を開発することが理想です。しかし、そう
した「フィン」を開発する為には様々な形状のフィンを製作し、実際
に熱テスト等を行って検証する作業が必要です。この「試作」「検
証」という作業に非常に時間がかかる訳で、このプロセスを最上イン
クスが代行することにより、他社との差別化要素としている訳なので
す。また、そうしたプロセスを繰り返しこなすことで自社に技術・ノ
ウハウが蓄積されていく訳なのです。これも「研究開発」です。

さらに「研究開発」まではいかなくても、「顧客代行」を行うことが
できれば、単なる価格競争を回避することはできます。
例えば今、仕事が集まっている鉄工所の共通点は、設計段階から対応
ができる鉄工所です。特に板金部品の場合、設計者が製品設計を行っ
た後に展開図に落とし込み、その上で鉄工所(板金加工業者)に仕事
を依頼しています。ところが今、多くの大手企業の設計部門において、
この「展開図」まで図面をつくる余裕がありません。多くの企業にお
いて、リーマン・ショックの際に技術スタッフが減らされているから
です。そこで、「展開図作成込みで板金部品加工を受けて欲しい」と
いうことが大手企業設計部門のニーズなのですが、これに対応できな
い鉄工所が圧倒的に多いのです。
そうした環境もあって、私のあるコンサルティング先の鉄工所は板金
機能付の3次元CADを6セット購入しました。今後は展開図込みの
仕事を積極的に受注していく為です。
今後はこの様に「顧客代行」ができる会社と、従来通りの仕事しかこ
なせない会社と、大きな差が開いていくことでしょう。

さらに現在の様な不況期は「売上」ばかり追うのではなく、徹底的に
「顧客満足」を追うべきです。つまり、何をすればお客様に喜んでい
ただけるのか、それを社内できちんと議論した上で、お客様に喜んで
いただく活動を全社ぐるみで取り組む、ということなのです。
例えば私が今、機械工具商社にご提案させていただいているのが「ロ
ーコストMRO商品」の開発です。例えばポリフィルム、軍手、マス
ク、保護服、ウエス、テープ、スプレーといった消耗品を海外からロ
ーコストに調達して、ローコストにお客様にご提供するという仕組み
です。
従来、こうした商品は機械工具商社では軽視されてきました。なぜな
らカサがはる割に売上に結びつかないからです。例えばパーツクリー
ナーを毎月100本売っても、金額にすると2万円くらいにしかなり
ません。これがLMガイドであれば、1つ売れるだけで2万円軽く超
えます。100個売って2万円と1つ売って2万円なら、誰もが後者
を選ぶことでしょう。しかし、どちらが多くのお客様に喜んでいただ
けるかというと前者です。事実、機械工具商社の場合、好業績の会社
ほどMRO商品にも力を入れています。

この様にその商品そのものの売上は数字に結びつかなくても、お客を
集める効果のある商品のことを、船井総研では「集客商品」と呼んで
います。しかし最近私は、こうした商品を「集客商品」と呼ぶのでは
なく「喜び商品」と呼ぶ様にしています。なぜならお客様に“喜んで
いただく”ことが、その商品の目的だからです。

この様に「研究開発」「顧客代行」「顧客満足(=喜び商品)」3段
階のマーケティングを、ぜひ自社に合った形で実践していただきたい
と思います。

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