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片山和也の生産財マーケティングの視点【特別編:ハノーバーメッセ視察とドイツ中小製造業視察より(1)】

4月23日から28日までの約一週間、ドイツハノーバーで開催され
る世界一の生産財見本市であるハノーバーメッセと、ドイツ中小製造
業を見学する視察セミナーを開催しました。
今回の視察セミナーからはドイツもトルコや中国といった新興国の攻
勢を受けていること、にもかかわらず中小製造業に至るまで価格競争
を回避する文化とビジネスモデルを備えていること、そうした新たな
発見がありました。
今回と次回の全2回で、本視察セミナーの報告をさせていただきたい
と思います。今回はハノーバーメッセ視察からのご報告です。

ハノーバーメッセは出展社数でJIMTOFの約8倍の規模を誇る世
界一の生産財見本市です。メッサーシュミット社エンジン工場の跡地
に建てられたハノーバー見本市会場は50万㎡(東京ビッグサイトの
5倍の面積)もの広大な敷地面積を持ちます。
そしてハノーバーメッセは下記8テーマの各展示会から構成されてい
ます。

1)インダストリアル サプライ
ここに来れば普通の旋盤・マシニング加工から鍛造品、鋳物部品、表
面処理、舶用の巨大な専門部品まで、あらゆる加工業者を探すことが
できる、そうした雰囲気のホールでした。
出展メーカーは中小企業が多く、一見すると同じような加工業者が多
く出展しています。ナショナルブランドメーカーが多く出展している
インダストリアル オートメーションのホールと比較して閑散として
いるが、欧州における部品加工情報を収集するには良い機会だと思い
ます。また日本のNCネットワークが出展していたのもインダストリ
アル サプライのコーナーでした。展示会を視察しての感想として、
ただ出展しても恐らく効果は見込めず、事前のPRを独自に行なわな
ければ具体的な成果は得られないのではないかと感じました。あるい
は継続的な出展が必要だと思います。

2)インダストリアル オートメーション
日本でいう“機械要素展”の内容に近く、同展示会を巨大にしたイメ
ージの展示会です。ベアリングやボールネジに代表される伝導機器、
ロボットやコンベア等のFA機器、三次元や画像処理等の検査計測装
置が主な出展内容です。
ハノーバーメッセの中でも“目玉”の展示会であり、ナショナルブラ
ンドメーカーの出展が主体ということもあり、各展示会の中では最も
賑わいを見せています。目に付いたのはユニット化技術。例えばボッ
シュ レックスロスのアルミフレームに代表される通り、“ユニット
化”はドイツの得意なパターンだと思います。セル生産対応のラック
が構築できる樹脂フレームや、搬送台車・AGVを構築できる樹脂フ
レーム等、日本であれば一般材料を切り出して製作するところを標準
化しています。欧州の“レゴ”的な発想があるのでしょうか。
また、コンセプトとして“ミニファクトリー”“卓上ファクトリー”
とも言えるコンセプトのFAシステムも多く見られました。ローコス
ト・省エネの観点でも生産システムの小型化は日本でも関心の高いテ
ーマだと言えます。

3)デジタル ファクトリー
日本でいう“設計・製造ソリューション展”の内容に近く、出展内容
としては3次元CAD、RP(ラピッド・プロトタイピング)、バー
チャル・リアリティである。
特にRP(ラピッド・プロトタイピング)に関するメーカーが多く出
展していた。かつてはRPといえば、専用の光硬化性樹脂に光をあて
て固める“光造形”と言われる手法が主流で、RP設備そのものも相
当高価であった。ところが今回の出展内容を見るとABSなど汎用の
エンジニアリングプラスチックを材料として使用することができ、ま
た設備価格も100万円強の価格で販売されているなど、今や“3次
元プリンター”とも言える位置づけになってきている。

4)エネルギー
電力発生・供給から受電に至るまでの設備・機器全般の展示会。ボイ
ラー等の動力発生源も展示されている。スマートグリッドや風力発電、
電気自動車関連の機器も多く展示されていた。特にスマートグリッド
と風力については専門コーナーがつくられ、展示に力が入れられていた。
ハノーバーメッセの中には「コイルテクニカ」(=コイル技術)とい
うかなり専門性の高い展示会が含まれていますが、「エネルギー」で
展示されているトランス・モーター・発電機との関連から「コイルテ
クニカ」も併設されたものと考えられる。

5)モビルテック
モビルテックは直訳すれば“自動車技術”になるが、展示内容は主に
電気自動車(EV)と、その関連技術・インフラ技術である。
展示会場屋外には走行コースがあり、実際にEVに試乗することがで
きる。

6)コイルテクニカ
エネルギー・モビルテックと関連の深いモーター・発電機・トランス
の心臓部品である、コイルの製造技術に関する展示内容である。
モビルテックもコイルテクニカも展示規模は小さい。エネルギーの1/5
から6/1の規模である。

7)インダストリアル グリーンテック
今年2012年からスタートした新たな展示会である。文字通り工業
生産におけるエコ技術がテーマである。内容的にエネルギーやモビル
テックのテーマと重複しており、インダストリアル グリーンテック
そのものの特色は強く感じられない内容であった。

8)リサーチ&テクノロジー
大学など研究機関による出展が主である。日本からも東北大学が出展
している。狙いとして大学など研究機関が持つ技術の民間企業への移
転(TLO等)と、公的機関のPRの場としての位置づけがある様で
ある。

展示会の規模が広大であるため、あらかじめ訪問企業を決めた上で来
場するのが理想的である。それが難しい場合は、上記8テーマのうち
関心の深いテーマの展示会について、初日は流して見て周る。その上
で詳しく質問をしてみたいブースの番号を控えておき、翌日は該当ブ
ースにて質問をして周るといった見学方法が最も良いと思われました。

私の場合は初日にインダストリアル サプライ(主に部品加工・加工
関連技術)とインダストリアル オートメーション(主にFA・制
御・伝導機器)を全体的に見学し、2日目は重点的に確認したいブー
スを見学しました。
全体的に感じたことは、トルコ企業の出展が多いこと。ドイツにおい
てトルコは安価な労働力の供給源であると同時に、付加価値の低い加
工分野においては安価な製造委託先になっているとの印象を受けた。
また中国企業の出展も目立ち、トルコ・中国企業の出展が全体の出展
者数を引き揚げているような印象を受けた。同様の現象は日本のJI
MTOF(日本国際工作機械見本市)でも見られ、2010年のJI
MTOFでは初めて台湾・中国メーカーが集まるホールがつくられた。
日本の場合は台湾・中国・韓国といった新興国は、今や日本の製造業
におけるライバルと捉えられています。ドイツ製造業においてトル
コ・中国企業をどう捉えているかは、視察セミナー3日目のドイツ現
地中小企業視察で確認したいところです。

今回のハノーバーメッセ全体で感じたことは、やはり世界一の産業
財・生産財の見本市(工作機械を除く)だけあり、人と企業を集める
強いパワーを感じました。ハノーバーメッセを見に来れば、ドイツだ
けでなく欧米企業はもとより中国企業にもアプローチが可能です。ま
た仕入先・商材・技術を見つけるだけでなく、見込み客の発掘やアプ
ローチなど、国際的な営業の場としても活用することができると思い
ます。(次回はドイツ中小製造業視察レポート)

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