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片山和也の生産財マーケティングの視点【特別編:ハノーバーメッセ視察とドイツ中小製造業視察より(2)】

視察セミナー3日目は下記3社のドイツ中小企業と、ブレーメン大学 
最新加工研究所を視察しました。

1.ステイン フーダー ベルクツォイク社
   ・・・試作・金型製造業(従業員17名)
2.ブリント社
   ・・・食品搬送設備セットメーカー(従業員90名)
3.ウォルグハード ヒューリング社
   ・・・機械加工業(従業員35名)
4.ブレーメン大学 最新加工研究所(IWT)
   ・・・産学連携を前提とする加工技術研究機関

企業視察の目的は、日本国内での中小製造業生き残りのヒントをドイ
ツ企業から学ぶところにあります。そうした意味で、3社とも下請け
型の中小企業を選定しました。

また、ドイツでは産業クラスターの中心に大学が存在し、日本以上に
産学連携が進んでいます。そうした観点でブレーメン大学 最新加工
研究所(略称 IWT)を視察先として選定しました。

今回の企業視察全体を通して感じたことは次の通りです。

・今回の視察先3社に共通する点は以下の通りです。
(1)取引先が多い。100社前後というケースが多かった
(2)特定の取引先への依存度が低い。高いケースでも20パーセント前後
(3)多品種少量生産である
(4)品質・納期へのこだわりが強い
(5)現場は整理整頓がされており、モラルの高さが感じられる
(6)価格競争をする気は微塵も無い
(7)事業を無理して大きくする意思は無い
(8)家族主義経営で質の高い社員の育成を志向している

・設備で差別化するというよりも、職人のレベル・モラルで差別化を
行なっている雰囲気が強い。また使用している設備自体も古いもの
が多い。

・営業においては営業専任者はおらず、社長が人脈・紹介を中心に行
なっているケースばかりであった。展示会などの活用も行なってい
ない。

・価格競争をする意思は微塵も無い様子である。同時に無理をして事
業を広げる意思も見られない。社員を家族のように扱い、時間をか
けて成長させていく姿勢を強く感じた。

・仕事を出す側の企業が、外注先を大切にしている様子を感じる。価
格よりも従来からの取引による信用を重んじる空気を強く感じた。

・そうした空気の中に、マイスター制度の存在を強く感じる。マイス
ターの資格は熟練工でなければ取得できず、ドクターに匹敵するネ
ームバリューがある。特に視察先3社目の企業については、マイス
ター自身が営業活動を行なうことの優位性を感じる。

・とはいえ、各社ともにリーマン・ショックの影響を大きく受けてい
る。売上が半減する会社もあるなど、このあたりの事情は日本と同
じである。ただ折からのユーロ安の影響もあり、足元の景気は日本
よりも良い様子であった。

・またブレーメン大学最新加工研究所の視察からも、日本以上に大学
のアカデミックな研究内容が民間企業の生産技術に反映されている
様子が伺えた。特に視察先1社目の企業は従業員21名ながら、大
学と連携を行なっており、その中から新たな仕事を獲得している。

・米国シリコンバレーがスタンフォード大学を中心とした産業クラス
ターであるのに対し、ドイツの場合も同様に大学が地域産業クラス
ターの中心となっている可能性が高い。もちろんザクセン州におけ
るフォルクスワーゲン社、バイエルン州におけるBMW社などの大
企業も産業クラスターの中心を成している様である。

↓↓↓視察先企業の概要と画像は下記をご覧ください

ドイツも日本同様、トルコに代表される新興国が価格攻勢をかけてき
ています。こうした新興国との競争について各社経営者に質問すると
「彼らと競争する気は全くないし、そもそも作っているものが違う」
と、自社・自国の競争力について心の底から自信を持っている様子で
した。
私はこうした彼らの自信の裏側に、小さな会社でも特定顧客に依存せ
ず、100社前後もの取引先を持とうとする独立心、また機械文明3
00年の歴史を強く感じました。

視察して強く感じたことは、保有設備や持っている技術、社員のモラ
ルは恐らく日本の方がずっと上だということです。足りないものがあ
るとすれば、新興国と価格競争はしない、彼らにできないことをする、
という強いポリシーではないでしょうか。
日本の中小製造業はもっと自社に自信を持った方が良いのではないか
と、強く感じました。

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