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片山和也の生産財マーケティングの視点【この4月・5月の景況と、その対策について】

「この4月は景況が振るわない」と感じられている、生産財業界関係
者が多いようです。3月決算明け、ということもあり4月は3月と比
較して振るわないケースが多いのですが、5月も見通しが今ひとつと
いう会社が多いようです。

世界経済的に言えば、ECB(欧州中央銀行)が100兆円を超える
資金を欧州の銀行に供給し、銀行はその資金で国債を買い支えるとい
うオペレーションが、思いのほか早く効果をなくしてきたことが背景
にあります。その結果3月には1万円台まで回復してきた日経平均株
価も、9000円台に下落した状態です。また緊縮財政を進めてきた
フランス・ギリシアの前政権が5月の選挙で軒並み敗北したことも、
欧州発の金融不安を感じさせています。
こうした情報に敏感な経営者は、当然のことながら不要不急の設備投
資を行ないません。

例えば某大手自動車メーカーのティア1企業なのですが、鋳物工場の
油圧ユニットが故障し、油の漏れが止まらない状態です。修理工事の
費用は30万円なのですが、その費用が稟議で通りません。「オイル
パンで受けて何とかしなさい」というのが、工場上層部の考えです。
新車種のやむを得ない設備投資は行ないますが、オイルパンでしのげ
る故障ならお金をかけずにそれでしのぎなさい、というのが世間の風
潮なのです。

また残念ながら、自動車関連の製造海外移転はしばらく止まらないで
しょう。前回のレポートで紹介したドイツにおいても、自動車関連の
大量生産品はトルコやポーランドなどの東欧に流出しています。ベン
ツでさえも「品質が下がった」と言われながらも、一部の車種は海外
生産している状態です。付加価値の高いモノづくりは先進国に残りま
すが生産技術が確立された分野、コモディティ化された分野は新興国
に生産移転されていくことでしょう。これはやむを得ないことです。
 新・ドイツ中小製造業 視察レポートはこちら↓↓↓

では先進国に残るモノづくりとは、どのような内容なのでしょうか。それは、
 1)多品種少量(微量)短納期対応
 2)難削材への対応
 3)設計段階からのVA・VE(コンサルティング対応)
 4)研究開発
 5)高精度加工・微細加工
例えばこういった生産技術を挙げることができます。製造業の方はこ
うした技術に取り組む、流通業の方はそうした取り組みをバックアッ
プしていくことが必要でしょう。

また経営的な観点で言えば、現在のような不況期に有効な指標が「新
規開拓売上比率」です。これは、全売上高に占める新規開拓の売上が、
どれだけあるのかという比率です。
ここで言う新規開拓売上とは、口座ができて取引を開始してから1年
以内の売上数字と定義します。これを毎月測定して、経営上の指標と
するのです。新規開拓売上比率の目標は10パーセントを目安としま
す。この比率が5パーセントを超えてくると、目にみえる業績向上の
成果が現れるはずです。

新規顧客の売上が増えると、不思議なことに既存重要顧客・既存優良
顧客の売上も上がります。これは新規開拓を行うことで、「提案営
業」あるいは「コンサルティング営業」が自然と行なえるようになる
からです。既存顧客だけを相手にしていても、自社の営業担当者のレ
ベルは上がりません。
あるいは新規顧客でなく、新商品でも良いと思います。例えば3M社
の場合は、過去5年間に開発された新商品の売上比率を25パーセン
ト以上とすることが、営業担当者に義務付けられた必須の事項です。
ミツトヨの場合は、過去3年間に開発された新商品の売上比率を30
パーセントと決めています。

このように激動の時代を乗り越えてきたエクセレントカンパニーは、
新規開拓売上比率、あるいは新商品売上比率にこだわっているのです。
自社ブランド商品を持たない会社の場合は、新規開拓売上比率を採用
されればと考えます。
いずれにせよ、不況期・激動期であってもリーダーが行なうべきこと
は明確だと思います。

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