片山和也の生産財マーケティングの視点【二極化する企業業績】
この4月くらいから景況が減速気味ですが、そうした中で企業業績も
二極化している様です。
例えば私の関係先で特殊鋼を扱う鋼材商がありますが、同業他社が昨
年対比で売上を落とす中、同社はずっとプラスで推移しています。理
由は好調な企業をターゲットとしていること、また商圏を拡大してい
ることにあります。
好調なターゲットとは、グローバルな競争力を持つ中堅・大手メーカ
ーをターゲットにしているということです。普通、特殊鋼の商社は金
型製造業がメインターゲットです。ところが金型製造業は非常に苦境
に立たされています。例えば一般部品加工業の事業所数がピークのバ
ブル期から約4割減少しているのに対し、金型製造業の減少幅は6割
を超えています。金型はデジタル技術のコモディティ化による国際競
争力の低下、中堅・大手メーカーによる内製化が進んだことにより苦
境に立たされているのです。
そこで同社では前述の通り、ターゲットを金型製造業から産業機械・
生産財メーカーに切り替えることで業績を維持しているのです。また、
地方都市に本社を置きながら、関西に営業拠点を出しました。理屈で
考えれば地方都市の鋼材商が、さらにライバルの多い関西に進出して
も勝ち目が無いように思えます。しかし実際には関西圏の優良ユーザ
ーの新規開拓に成功し、今や関西支店が業績を牽引している状態です。
こうした企業業績の二極化は不況期、あるいは成熟業種で顕著になり
ます。例えば町の商店街などの衣料品店は、その大半の経営が成り立
っていないと言われます。そうした中、ユニクロは年間200を超え
る新規店舗を出店しています。またファッションセンターしまむらも
年間70を越える新規出店を行なっています。「大手は価格勝負でき
るから強いのだ」と思われる方もいるかもしれません。ユニクロやし
まむらは一見価格勝負に見えますが、実態はイオンやダイエーの方が
安価な衣料品を置いています。価格勝負ではなく、品揃えとコンセプ
ト・品質で勝負しているから固定客をつかんでいるのです。
これを部品加工業や機械工具商社に適用するならば、従来の「営業」
を「コンサルティング」に進化させることが求められます。営業はこ
ちらから売り込む行為なので、どうしても主導権がとれません。コン
サルティングは相手からの引合・相談に対応する行為なので主導権が
とれます。主導権がとれれば価格競争になりません。
しかし普段は御用聞きをしているルートセールスの営業マンに対して、
急に「コンサルティングをやれ」と言っても、本人のスキル以前の問
題として、お客の側が信用してくれません。一度「御用聞き」あるい
は「業者」とレッテルを貼られてしまうと、よほどのことが無い限り
それを覆すことはできません。
ですから、そこでスタッフ担当者が必要になってきます。例えば部品
加工業であれば「生産技術部」をつくり、客先への提案活動は生産技
術部が行うようにします。普段客先をまわる営業担当者は、「うちに
は設計段階から加工の相談に対応できる生産技術部があります」とい
ったことを“強み”としてPRするように教育します。
あるいは機械工具商社であれば「技術部」をつくり、「うちには専用
機製作や工事・部品加工に対応できる技術部があります」と、そうし
たPRをさせるのです。
こうした「生産技術部」あるいは「技術部」は、その会社内で最も提
案営業ができる人を充てれば良いのです。会社の規模によっては、そ
の役割は社長になるかもしれません。
実際に、大手企業の設計者のニーズは「最適な材料選定」「表面処理
の選択」「部品の加工可否判断」といったVA/VE提案にあります。
特に部品加工は大手企業外の中小企業が役割を担っていることが多く、
その技術が設計者向けに体系化されているわけではありません。特に
最近では大手企業から現場のベテラン職人が減少しています。大手企
業の開発者・設計者の中小製造業へのニーズは高いのです。
ところが、こうしたVA/VE提案というのはピンポイントなニーズ
です。例えば飛込み営業といった「プッシュ型営業」で、こうしたニ
ーズをキャッチすることはできません。あくまでもWebを通した問
い合わせや、展示会・広告メディアなど「プル型営業」を活用してい
く必要があります。
生産財業界は、営業担当者が客先に出向く「プッシュ型営業」が営業
活動の基本です。しかし、今業績の良い会社は従来の「プッシュ型営
業」に加え、「プル型営業」の要素も取り入れている会社です。
「プル型営業」を取り入れる為には、潜在顧客をこちらに注目させる
為のマーケティングが求められます。
来る2012年6月28日(木曜日)東京にて、こうした中堅・大手
企業の設計部門を攻略するためのセミナーを開催します。
本セミナーには特別ゲスト講師として、今注目の町工場、日刊工業新
聞の「町工場三代目奮戦記」でも有名な株式会社由紀精密の大坪常務
にもご講演いただきます。同社は特定顧客に依存、受注半減の危機に
見舞われながらもVA/VE提案を中心としたマーケティングで業績
を伸ばし、現在ではフランスへの進出を計画している機械加工業です。
↓↓↓由紀精密 大坪常務へのインタビュー はこちら
https://www.funaisoken.co.jp/site/seminar/semina_1336835280_1.html
(上記サイトからPDFファイルをクリックいただくとインタビュー
記事がご覧になれます)
ぜひ同セミナーへのご来場をご検討いただき、すぐに取り入れられる
マーケティングを実践していただきたいと思います。
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