片山和也の生産財マーケティングの視点【ジョイント・ベンチャー】
先日、ある技術コンサルタントの方とお話をする機会がありました。
その方はプレス加工業への技術指導を専門に行なわれている方ですが、
どこの会社の仕事でも受ける訳ではないそうです。
例えばプレス会社でも、現場のパート・派遣社員比率が高い会社から
の仕事は受けないとのこと。プレス加工といえば一見単純労働に見え
ますが、実際にはコストダウンにつなげるための工程集約、金型の改
良など、多品種少量対応の技術的側面が強くなっています。
そうした「難しい仕事」をこなすためにはプロの技能者・技術者が必
要です。そうした社員のプロ化への教育を、短期的・限定的雇用が前
提のパート・派遣社員相手ではとうてい施せない、というのがその理
由だそうです。
またフォックス・コンなど、台湾・中国のEMS(製造請負会社)か
らも多数のヘッドハントがあったそうですが、全て断ったそうです。
例えば液晶製造装置や検査装置も台湾製の製品が幅を利かせています
が、これらの設計の大半は日本の設計事務所が行なっているそうです。
金型業界などは特にそうですが、表面上は韓国企業や中国企業が製造
しているように見えますが、実態は日本人SV(スーパーバイザー)
が指導しているケースが大半なのです。
図面の流出程度で、本当の技術は流出しないと思います。やはりポイ
ントは「差別化された人」なのです。
また、マーケティング的に興味深いお話もされていました。それは複
数者連携による、大手企業設計部門に対する「出張展示会」です。金
属加工技術は飛躍的に進歩し続けています。もし設計者がそうした最
新の工法を知った上で設計を行えば、設計段階からのコストダウンも
可能ですし、今まで構想できなかったような製品も設計可能となりま
す。ところが加工業者1社では、保有している設備も技術も限られま
す。そこで異なる設備・技術を保有する複数の会社を連携させ、複数
の会社で設計者向けにVA/VE出張展示会を企画しているのです。
(VA/VEとは設計段階からのコストダウンのことです)
実際、私の関係先の京都K社も、自社は機械加工業ですが仲間の板金
加工業、製缶加工業、長尺加工が得意な業者 4社と組んで、トータ
ルに部品加工を売り込み、取引先から好評を得ています。設計者の立
場からすれば、「機械設計」「板金設計」「製缶設計」と大きく3つ
の視点があるわけですから、この3要素で提案を行なうことができれ
ば、大半の設備設計者のニーズは押さえることができるわけです。
こうした複数業者が連携をとることを、マーケティング用語ではジョ
イント・ベンチャーといいます。例えば引越し業者は家具業者とアラ
イアンスをとっており、引越し客に対して家具販売のカタログを渡し
たりしています。こうした取り組みもジョイント・ベンチャーです。
そう考えれば、例えば切削工具を販売する機械工具商社の場合も、自
身の客先である中小鉄工所の中で前述した要素を満たす販売先を組織
し、自社が取引している大手企業の設計部門に対して出張展示会を企
画する、といったことも考えられます。
機械工具商社は大手企業から中小鉄工所まで、幅広く取引先がありま
す。中小鉄工所に対しては大手企業の設計者を紹介することになりま
すし、機械工具商社にとっては加工品の販売はもとより、大手企業と
のパイプが太くなり、より新たなニーズを発掘することができるはず
です。
現在は不況だと言われますが、マーケティング的思考をもってすれば、
新たな突破口はいくらでも開けるはずなのです。
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