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片山和也の生産財マーケティングの視点【褒めて育てる」についての考察】

先日、私の関係先でミーティングが終わった後、その会社の社長から
「片山さん、今日はうちの社員を褒めてもらってありがとうございま
した」と言われました。新規案件の仕事で、比較的高い精度の仕事だ
ったのですが、その会社の社員が努力して仕上げて無事に納入したわ
けです。精度的にはサブミクロン前半ですが、それでもその会社の設
備から考えれば、高い技能が求められます。そこで私が「すごいです
ね、よくできましたね」と発言したところ、本人はいたく自信がつい
たようで、その後の会議でも積極的に発言をしたわけです。

私としては、褒めようと思って褒めたわけではなく、純粋に“よくで
きたな”と思ったので、それを発言したわけです。今回のケースで言
えば、その会社は組立メインの樹脂加工会社です。機械加工がメイン
ではないので、工作機械そのものは高性能な設備を持っていません。
その中で、2/100mmという要求精度に対してそれを仕上げるこ
とができた訳です。一般的に、5/100mm程度の加工であれば、
どこの鉄工所でもできる仕事です。ところが3/100mm以下、と
なるとできない鉄工所が増えてきます。私の中に、そうした価値尺度
が存在していたから、さらにその会社の保有設備を知っていたから
「すごいですね」という無意識の発言に至ったわけです。

よく「褒めて育てろ」と言いますが、この言葉だけが一人歩きすると
非常に軽薄で安易だと思います。「育てろ」というくらいですから、
相手は未熟な存在です。ところが未熟な人に対して褒めても本人は調
子に乗るだけで、かえってマイナスが目立つようになります。
私自身、コンサルタントであると同時に船井総研の管理職でもありま
すから、部下育成の責任があります。幸いなことに私の場合、私の部
下は順調に育ってくれています。今年も私のグループからは2名ほど
の管理職が生まれることでしょう。
私が意識していることは部下のキャリア・スキルをもとに“あるべき
姿”を設定し、それを部下と共有し、その“あるべき姿”に対して現
状とのギャップをどう埋めていくのかということの共有です。そもそ
も最初に設定した“あるべき姿”が上司と部下の間でずれていると、
あるいは設定されていないと、褒めようが叱ろうが部下は育ちません。

世の中には比較的安易な思想が受け入れられるものです。例えば「新
規開拓よりも既存顧客の深掘り」、あるいは前述の「褒めて育てる」
という言葉です。私自身が何冊も書籍を出版しているからよくわかり
ますが、書籍というのは“真実”よりも“売れる内容”に力点が置か
れていることは知っておかなければなりません。
「新規開拓をしましょう」と言っても言われた側は「大変な・・・」
と受け取るわけです。それに対して「既存顧客を深堀しましょう」と
言うと言われた側は「その通り」と共感しますがその実はその方が楽
だからです。既存顧客重視は当たり前のことであって、それは「目
標」になりません。それは「前提条件」です。目標と前提条件を取り
違えた組織は衰退します。格好の事例が航空業界です。マイレージに
よるロイヤルカスタマー戦略を推進した結果、どの航空会社も儲かっ
ていません。新たな顧客を創造するという視点がそこに無いからです。
逆にサウスウエスト航空など、LCAといわれる新興勢力は長距離バ
スから顧客を奪うなど、ロイヤルカスタマー戦略ではなく新規顧客獲
得戦略で伸びているわけです。既存顧客重視は前提条件であって、あ
くまで目標は新規顧客獲得なのです。

「褒めて育てろ」「部下の話を聞け」というのも同じです。私は部下
の話なんて聞きません。逆です。部下が私の話を聞いてよく考えるべ
きなのです。だから私は部下の発言をよくさえぎります。なぜなら最
後まで聞かなくても、部下が何を言いたいのかがわかるからです。
それよりも、もっと重要なことがあるわけで、それが先ほどお話した
「あるべき姿」の共有であり、現状の姿と「あるべき姿」との間のギ
ャップの共有です。激動期の中で指揮をとらなければならないリーダ
ーが絶対に知っておくべきことだと私は思います。

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