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片山和也の生産財マーケティングの視点【スライドマーケティング】

昨年の9月くらいから下降気味であった生産財業界の市況ですが、今
年1月後半くらいから商談が増え始めました。セットメーカーも自動
車関連の会社を中心に案件が増えてきており、来期(4月)以降の数
字も見えてきた、という会社が増えてきました。
全国的に言えば、西にいくほど市況が厳しいと言われています。東北
はトヨタ関連の増産もあり昨年対比3割アップレベルで好調、北関東
も自動車関係で好調、浜松も仕事が戻ってきたようです。
京都・大阪エリアはエレクトロニクス産業の苦戦もあり不調、広島・
中国はマツダの大幅赤字の影響もあり不調、九州もIT関連が不調で
市況は良くありません。

かねてから申し上げていますが、今は業種単位で会社の業績を語れる
時代ではありません。また、市況が悪い地域でも業績の良い会社はあ
ります。いわば本格的に二極化が進んできていると言わざるを得ませ
ん。ここで企業の二極化を語る上で2つの視点があります。

まず全国区・あるいは世界商圏を相手にしている企業の場合です。
この場合、現在のような激動期になると商品・あるいは事業で圧倒的
一番の会社が有利になります。例えば時価総額が世界一となったアッ
プルは、PCとスマートフォンしか手がけていません。あらゆる家電、
産業機器をてがけているパナソニック、シャープ、ソニーなどは巨額
赤字です。全社は圧倒的一番の商品に絞り込んでいるのに対し、後者
は圧倒的一番がありません。実際にはあるのかもしれませんが、すぐ
には思い浮かびません。それでは弱いのです。
例えば台湾にTSMCという会社があります。同社はフォックスコン
のような製造受託会社ですが、半導体・液晶に特化したファンドリー
です。エルピーダやルネサス、さらにサムソン電子も巨額赤字の中、
同社は現在でも積極的な設備投資を行なっています。同社は世界一の
半導体ファウンドリーだからです。

また地域密着企業の場合は、商圏を地域に絞っているわけですから、
その中で取扱商品を増やさなければいけません。しかも現業から大き
く離れた商品・顧客ではなく、現業のお隣の商品・顧客を新たな事業
の柱として育成していくのです。これを「スライドマーケティング」
と言います。機械工具商社が部品加工やメンテナンスを手がけるのも
スライドマーケティングです。
さらに商圏限定の会社の場合は「弱いものいじめの戦略」が有効とな
ります。例えば関西エリアの機械工具商社A社は、リーマン・ショッ
ク後に新規営業を2拠点展開して業績を伸ばしています。同社は、あ
えて地場に有力ディーラーがいないような、いわば田舎町に営業所を
出します。そして地場の零細販売店・個人事業主を競争相手として叩
くわけです。今の時代は顧客だけでなく仕入先も販売店の選別を進め
ています。快進撃を進めるA社と地元の零細個人商店、どちらが勝つ
かといえば物理的にも心理的にもA社なのです。

このように考えれば、例えば部品加工業のように限られたラインナッ
プで事業展開を行なっているような会社は、全国区に商圏を広げるこ
とが必須であることがわかります。ということは、何でもいいから日
本一の分野を持たなければならない、ということです。
そして機械工具商社のように限られたエリアで事業展開を行なってい
るような会社は、前述した通り商品・顧客を“スライド”させるマー
ケティング戦略が必要です。

いずれにせよ激動期になると躍進する会社と、自社の器に合わせて事
業内容を縮小する会社とに二極化します。前者となるか後者となるか
は、その組織のトップ1人にかかっているのです。

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