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片山和也の生産財マーケティングの視点【需給のギャップが非価格競争を実現する】

日本を始めとする先進国における、ものづくりの強みは町工場に代表
される各種加工業者が集積している点にあります。
例えば金属から部品をつくり出すにしても金属を削る機械加工、ある
いは板金加工が必要です。さらにその後に熱処理を行い研磨加工、あ
るいは表面処理を施すといった複数工程が必要です。

しかも各工程においてワークサイズや材質によって、必要な工作機械
や機械工具・治具は異なります。多品種少量のものづくりを行なうた
めには、日本やドイツ、あるいはイタリアに見られるような加工業者
の集積が不可欠なのです。

また、昨今では現場レベルでの改善活動によるコストダウンが限界に
きており、設計段階からのコストダウン(=VA/VE)が以前にも
増して求められるようになりました。
その時に設計者に求められるのが加工の知識です。ところが多くの場
合、設計者には加工の知識が不足しています。

例えば私の顧問先の工作機械メーカーの生産会議では、よく設計部門
と製造部門とが議論になります。先日も現場の製造部門が設計の許可
を得ずに図面変更をしてしまう事件が起きましたが、その原因は設計
図通りだと溶接個所に溶接トーチが入らず、製作不可能な図面であっ
たことが原因でした。もちろん、この会社でも設計の為の標準規格は
決めてあります。しかしオーダーメイドの製品が中心であるため、ど
うしても全てのパターンを規格化することができないのです。

このように設計者にとって、どのような設計を行なえばローコストに
加工が行えるのか、という知識は必須です。ところが書店に行っても
現場向けの加工技術の本は多数存在しますが、設計者向けの加工技術
の本はほとんど存在しないのです。

そこで私の顧問先の部品加工会社では、自社の加工ノウハウを設計者
向けにわかり易く解説した資料をつくり、それをWebサイト上で情
報発信しました。かつ、その内容を技術セミナーとして開催予告をW
ebサイト上に掲載したところ、DMを発送する前からWebサイト
経由で複数の申込がありました。その会社は首都圏の会社なのですが、
わざわざ静岡県の会社から申込があったのです。しかもその会社は日
本を代表する大手企業の関連会社であり、セミナーへの参加者は設計
部門のマネージャーでした。

そのマネージャーによると、今、設計部門はかつてないほどVA/V
E(=設計段階からのコストダウン)が求められていますが、実際に
はそうしたVA/VEにつながる情報が不足しているというのです。
例えば設計で使用するモーターや歯車、ベアリングであればメーカー
も大手であり、技術資料も揃っていて出張セミナーも頻繁に開かれま
す。従ってそうした製品に関する情報は設計者も共有できています。
ところが加工技術に関しては、加工業者自体が零細・中小企業が多く
技術が体系的に整備されていないこと、さらに属人的であることから
情報が共有できていない、というのです。書店に行っても前述の通り
設計者向けの加工技術の実務書というのは、ほぼ存在しません。そこ
に需給のギャップがあるのです。

つまりそうした課題を抱えていたその大手企業関連会社にとって、私
の顧問先がWebサイト上で提案した設計者向け技術セミナーは非常
に魅力的であったのです。

こうした一連のマーケティング活動で確信を持って言えることは、今、
大手企業は門戸を閉ざしているわけでなく、常に優秀なサプライヤー
を探しているということです。優秀なサプライヤーと言うのは、部品
加工業で言うならばVA/VE提案が行える会社ということです。
これは機械工具商社で言えば、生産技術代行あるいは保全代行ができ
る会社です。前回のレポートで紹介した京都の機械工具商社である
K・マシンの場合、年間約40社の新規開拓を行なっていますが、最
も不況の年であった2009年は70社を超える新規開拓を実現しま
した。昔から定説で言われるとおり、不況期ほど新規開拓を行なうに
は有利なのです。

売り込む相手と売り込むべき商品(提案)が適切であれば、不要な価
格競争に陥ることはありませんし、お客の側から引き合い・問い合わ
せを出してきてくれます。そうした仕組みを論理的かつ体系的に考え、
実行していくプロセスがマーケティングです。今までは事実上、消費
財マーケティングしか存在していませんでしたが、今の時代は生産財
マーケティングがあります。
技術や経験を売りにする生産財業界においても、いよいよマーケティ
ングが占める役割は重要になってきているのです。

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