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片山和也の生産財マーケティングの視点【生産財産業は日本の成長産業】

自動車産業を中心に、生産財業界も活況を呈しつつあります。私の関
係先の自動車関連治具メーカーは、この先ほぼ1年間の仕事の見込が
ついています。設備面でもヨーロッパの新環境規制であるユーロ6に
対応した新ラインの話が聞かれるようになってきました。

また、トヨタが年末から来年にかけて生産を予定している新エンジン
は、従来の小型エンジンにターボチャージャーを接続することで低排
気量でありながらハイパワーを生み出すというもので、ハイブリッド
技術とならび、将来の省エネ技術と目されているといいます。

こうした自動車や内燃機関に代表される機械技術は、材料技術・熱力
学・加工技術・組立技術・制御技術がトータルに必要とされる総合技
術です。自動車の組立や付加価値の低い部品の生産は海外にシフトす
るかもしれませんが、前述のターボチャージャーなど、重要基幹部品
の生産は先進国がその中心となるでしょう。

前々回のレポートで、フランスに進出を予定している従業員17名の
鉄工所の話をしましたが、同様に興味深い話があります。それは4月
23日から1週間の日程で開催されるハノーバーメッセに、日本企業
が31社出展するというのです。昨年は17社の出展だったそうで、
今年は約倍増ということになります。
その出展企業の中に中小加工業のネットワーク組織であるNCネット
ワークがあります。今回、NCネットワークでは中小部品加工業11
社で、ハノーバーメッセに出展するといいます。従来、NCネットワ
ークは中小部品加工業の中国・アジアへの進出に注力されていました
が、今回はヨーロッパ先進国向けの見本市に出展するわけです。必ず
しも価格競争に頼らない、高付加価値の技術が日本の中小企業にはあ
るということなのです。

逆に製造コスト低減を目的に、発展途上国に進出した中小企業の多く
が苦戦を強いられています。先日、私が主宰する部品加工業経営研究
会で、試作板金で日本一の技術を持つと言われる最上インクスの鈴木
社長に講演いただきました。
ご講演の様子↓↓↓

同社は試作分野だけでなく量産も一部手がけているそうですが、その
量産分野において、コストダウンを目的として某大手メーカーからの
依頼を受け、中国に製造拠点を設けたそうです。ところが度重なるコ
ストダウンの要請に採算が合わず、「もう手をひかせてほしい」とそ
の取引先に申し出たといいます。今後は価格競争になる量産分野には
注力をせず、自社の強みが100パーセント生かせる試作・開発支援
に注力すると鈴木社長は言われていました。

生産財産業の特徴は超多品種少量生産が前提であり、また職人技を要
する職人型工業であるということです。大量生産が前提の汎用自動車
分野では韓国勢の追い上げが著しいですが、ロボットの生産において
は現代自動車も自社生産を諦めたといいます。世界的にみて、ロボッ
トを生産している国は日本とドイツくらいしかありません。これはC
NC制御装置についても同様のことがいえます。

工作機械もロボットも、バブル崩壊前のピークと並ぶ受注水準が今年
は見込まれます。多くの産業で受注ピークが1991年のバブル崩壊
前であることを考えれば、生産財産業は日本における成長産業である
といえます。マスコミや公的機関の多くが海外移転を煽るような報道
をさかんに行なっていますが、業界プロの我々としては、こうした正
しい情報を押さえた上で正しい現状判断を行なっていく必要があるの
です。

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