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片山和也の生産財マーケティングの視点【国内製造業の海外移転対策】

最近、よく経営者の方から「国内製造業の海外移転が加速しているが、
どう対策を打てばいいのか」といった話を受けます。
「国内製造業の海外移転が加速というのは、どこからの情報です
か?」とお聞きすると、新聞だと言われます。

確かに新聞を読むと、まるで日本中の製造業が国外に出て行くかの論
調で記事が書かれています。
しかしほぼ毎日、日本全国の生産財業界の現場に出ている私の目から
見ると、必ずしもそうは見えません。むしろ比較的好調なエリアが多
く、私の東北の関係先は今年中か来年早々に新営業所を立ち上げます。
また、京都の関係先も年内に新営業所を立ち上げます。既に用地は確
保しました。

以前このレポートでも書きましたが、確かに消費財をつくる工場は全
般的に不振であり、海外移転の話も出たりしていますが、生産財をつ
くる工場は好調な工場が多いのです。

同様のことはアメリカでも見られました。アメリカでは1980年代
に、ほとんどの耐久消費財の国内生産をあきらめたといいます。当時
のGE社長のジャックウェルチは、GEの工場がある街の電気店で売
られる日本製のテレビを見て、「GEでつくられるテレビの原価より
も安く売られている」と驚き、GEはテレビからの撤退を決断したと
いいます。その後、GEは全ての家電製品からの撤退を決めました。
その後のGEは航空宇宙・原子力・医療といった生産財分野に特化す
ることで、さらなる成長を実現してエクセレントカンパニーになりま
した。こうしたことが、産業構造の変化なのです。

日本も同様です。こうした産業構造の変化には対応していかなければ
ならないでしょう。また、需要地に生産拠点をつくることは意義のあ
ることだと思います。

しかし、円高を回避するために海外に進出するのは非常にナンセンス
だと思います。なぜなら為替は博打と変わらないからです。今は超円
高ですが、そのうちに超円安になる可能性だってあります。
事実、今多くの輸出入を行なう中小企業の間で“為替予約”の問題が
注目を集めています。数年前に多くの銀行・金融機関が「これから円
安になる」としきりに為替予約を進め、1ドル=100円の為替予約
を数年単位でしてしまっている会社が多くあります。

つまり数年前には「1ドル=120円くらいになるのではないか」と、
多くの会社が1ドル=100円の為替予約をしたわけです。しかし蓋
を開けてみると1ドル 70円台 というのが現在の状況です。そう
いう意味では為替の予測など誰もできないのです。

言い換えれば円高対策で海外に出て、工場が立ち上がったころに円安
に振れる可能性だって大いにあるのです。従って、為替対策で製造拠
点を移すのはナンセンスであり、そうしたことは多くの大企業経営者
はわかっているはずの問題です。
ただし海外商品を扱うなり、原材料の海外比率を上げるなど、円高を
プラスにもっていく施策はうつべきでしょう。例えば私の関係先の某
商社は輸入商品を自社PBとして展開しており、円高のおかげで高い
競争力を持っている上に利益があがっています。そうしたピンチをチ
ャンスに変えることは常に考えなければなりません。

マスコミや金融機関が言うとおりにして幸せになった人はいません。
冷静に自分の頭と直感で考える必要があります。
特に中小企業の場合はあせらず、着実に差別化を進めて国内で生き残
れるビジネスモデルを確立するべきだと思います。

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