片山和也の生産財マーケティングの視点【国内製造業の海外移転の実態】
前回、このレポートでも述べましたが、必要以上に製造業の海外移転
を脅威に感じることはマイナスだと思います。
実際にデータ(経済産業省 工業統計)を検証してみると、
・製造業事業所数のピークは1988年で74万5000事業所
⇒2008年は44万2000事業所であり約4割減
ところが出荷高でみると、
・製造業国内出荷高は1988年で277兆8350億円
⇒2008年は337兆864億円
このように、出荷高は逆に増加していることがわかります。
確かに事業所数はピークから見て4割減少していますが、出荷高が増
加していることの理由は、それだけ「二極化」が進んでいるというこ
とです。
また、この4割減少という数字が大きいか小さいかといえば、商業関
連の事業所(問屋・卸など)もピークから3割減少していますから、
製造業だけがとりたてて淘汰されているわけではありません。
全ての業種で淘汰が進んでいるのです。
しかし付加価値でみると、
・製造業国内付加価値は1988年で104兆7520億円
⇒2008年は102兆5470億円
となっており、付加価値(つまり粗利益)は横ばいから減少傾向にあ
ることがわかります。
つまり国内製造業は、事業所がピークから4割減るものの出荷高では
増加しており、ドルショック・円高を乗り越えて国際的には極めて高
い競争力を持っている産業であることがわかります。
ただし付加価値は1990年をピークに横ばいから減少傾向であり、
価格競争が厳しくなっていて、かつてほど儲からなくなっていること
がわかります。この要因としてはデフレ圧力、また技術的にはNC化、
IT化による生産性の向上を考えることができます。
また、事業所数が減少する中で付加価値が横ばい、というのは明らか
に「儲かっている会社」と「儲かっていない会社」に二極化している
ことがわかります。
事実、私の専門分野である生産財業界、具体的には機械工具商社、部
品加工業、セットメーカー、生産財メーカー各社を見聞きしても、や
はり利益をきちんと上げて内部留保ができている会社と、同じ立地、
同じ条件でも赤字の会社があります。
そこには「価格競争を回避する戦略」があるかどうか、またそれ以前
に組織として一体化していて、規律のとれた指揮命令系統が存在する
かどうか、あるいは高いモチベーションが存在するかどうか、という
問題があります。
利益が上がらない理由として「製造業の海外移転が激しいからだ」と
いうのは解決不可能な問題ですし、ともすれば社員・部下のモチベー
ションを下げる発言になります。
私は問題の本質はそこには無いと感じています(次回に続く)。
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