注目のキーワード

製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る

■国内製造業の海外移転の実態(2)

以前からもこのレポートでお伝えしていますが、確かにコモディティ
化が進んだ消費財の生産は海外への移転が進んでいますが、スペシャ
ルな要素の強い生産財は国内生産がメインです。

先般も新聞で、日本の電子部品メーカーが中国奥地に営業拠点を設立、
とありました。製造拠点ではなく、営業拠点です。
アップル社のアイフォンは台湾や中国のEMS(受託製造業者)によ
って製造されていますが、中の電子部品は大半が日本製です。

また最近、中国で業績を伸ばす三一重工という建設機械メーカーがあ
りますが、エンジンや油圧部品など主要部品は日本製です。
つまり最終製品アッセンブリを新興国が行い、製品の中の重要部品は
日本が供給するという、そうしたビジネスモデルがアジア内でできあ
がっているとみるべきなのです。

ただし主要部品もコモディティ化してしまうと、仕事は海外に流れま
す。例えば携帯電話のパネルですが、かつてはアクリルが主流でした
が、最近の主流は強化ガラスです。従ってモバイルのアクリル関連の
仕事は海外に流出しています。付加価値が低くなったからです。

金型にも同様のことがいえます。今や金型産業は中国・韓国などの新
興国との競争にさらされて価格競争の世界です。金型御三家といわれ
た大手3社も経営統合され、あるいは海外資本の参加に入りました。

金型産業が衰退した理由として、日本の技術が新興国に流れた、ある
いは図面が新興国に流れたと言われますが実態は異なります。金型産
業が衰退した最大の要因は、2次元図面から3次元データ化によるI
T革命によるものです。

かつて金型職人のブラックボックスは、2次元図面から3次元の金型
を作り出すことでした。例えば15年前、3次元CAD/CAMは安
くても3000万円くらいして、当時はパソコンではなくワークステ
ーションで稼動していました。
しかし今、3次元CAD/CAMは300万円も出せばハイエンドの
ものが購入できます。3次元CADだけであれば、100万円も出せ
ばあります。また、パソコンの性能が飛躍的に向上した結果、ワーク
ステーションも今や存在しません。つまり中小企業でも簡単に3次元
を導入できる時代になったのです。

その結果、金型職人のブラックボックスが無くなり、この道20年の
職人でなくとも、入社3ヶ月のオペレーターが3次元データをもとに
金型モデリングができる時代になったのです。

つまり金型業界は新興国への技術流出・価格競争で厳しいのではなく、
IT革命によって厳しくなったと考えるべきです。

新聞や雑誌をはじめとする報道を聞いていると、口を揃えて「中国は
勢いがある、日本と違う」といったことを言います。しかし私からす
れば、発展途上国に勢いがあるのはあたりまえのことです。
文字通り、発展途上にあるわけですから、いわば子供がエネルギッシ
ュに動き回るのと同じ理屈です。

自社のビジネスモデルが日本(先進国)で通用しなくなったから、海
外(発展途上国)に進出する、という考え方はあまりにも安易です。
それよりも経営者として、日本国内・先進国で通用するビジネスモデ
ルを考えることが先決でしょう。

国内で生き残る“普通の”町工場の取組み↓↓↓

製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る

関連記事

アクセスランキング

製造業・工場経営.comを運営する船井総合研究所が提供する各種サービス

ものづくり経営研究会オンデマンド
ものづくりグロースクラウド

無料経営相談の
お問い合わせ