注目のキーワード

製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る

片山和也の生産財マーケティングの視点【トップのテーマ設定力が業績を決める】

先日、私の関係先の創業社長が「これから一時的に景気が良くなるの
ではないか」と言われていました。その理由は世界中の金融緩和です。
特に欧米政府当局は日本のバブル崩壊から20年続く不況を徹底的に
研究しており、日本のバブル崩壊と同じパターンを絶対に避けようと
している強い意志が見られます。

具体的には先ほども述べましたが、米国QE3に代表されるような徹
底的な金融緩和、そして欧州当局が行なっている「大銀行は絶対に潰
さない」という、大きな2つの方針に表れています。
日本のバブル崩壊は、度重なる金融引き締めに加えて不動産取引の
「総量規制」がとどめをさしました。またリーマン・ショックの直接
の原因は文字通り投資銀行リーマン・ブラザースの破綻にあり、こう
した過去の経験が、「徹底的な金融緩和」「大銀行は潰さない」とい
う欧米政府当局の暗黙裡の方針の根底にあるものと考えられます。

また日本工作機械工業会の予測によれば、今年の工作機械国内受注見
通しは1兆2000億円と、昨年実績1兆3000億円に続き1兆円
を上回っています。つまり、生産財業界は景気が良いか悪いかと言わ
れれば、景気は良いのです。
そう考えれば、今の時期は「攻め」か「守り」かと言われると、実は
「攻め」のタイミングなのかもしれません。

ただし前回のメールレポートでも述べましたが、今の時代は業種で業
績を語ることができません。
例えば自動車業界は全体的に好調ですが、それでもホンダの1次協力
会社である八千代工業は上限を設定しない希望退職を募っています。
ホンダブランドの軽自動車OEM生産を引き揚げられたことが、同社
の苦境の原因です。

不況期には「一番」に仕事が集中する、といいます。小さくても良い
ので何かで「一番」の商品・市場を持つことが、今の時代に求められ
ることです。さらに今の時代は経営トップ自らが商品開発、あるいは
営業活動に携わることが必要です。

例えば私の関係先で同業他社が不振の中、昨年対比120パーセント
の売上を達成している金物問屋(従業員40名)の場合、社長自らが
中国各地を回ってローコストPB商品の開発を行い、毎月1商品以上
のペースで新PB商品を市場に投入しています。

また私の関係先の部品加工業(従業員30名)の場合、多額の販促投
資を行い、先日東京ビッグサイトで開催されたインターネプコンに自
社ブースを出展しました。インターネプコンはIT関連では最大級の
展示会ですが、難削材の加工技術に関心を持つ多数の大手メーカー技
術担当者からの引合いを獲得することができました。

さらに京都に本社を置く、地域密着型の機械工具商社であるK・マシ
ン(従業員28名)は、あえてこの時期に新営業所を出店することを
決断しました。その理由は新規開拓した大手ユーザーに対する営業フ
ォロー体制の強化と、ランチェスター理論でいうところの「弱い者い
じめ」にあります。機械工具商社は企業として組織で動いているよう
な会社もあれば、個人事業レベルの零細業者まで様々なレベルの会社
が多数存在しています。競争戦略の基本は自社と同じレベルのライバ
ルと競うのではなく、自社よりも体力の乏しい相手を徹底的に叩くこ
とにあります。新営業所により利便性を上げて顧客満足度を上げ、同
社よりも大きく体力の劣る零細業者からシェアを取ることも、当然視
野に入れているということなのです。

このようなマーケティング・営業面での各種施策は社内の一体化にも
つながります。なぜなら経営トップが「新商品販売」「東京での展示
会出展」「新営業所出店」という戦略レベルでの具体的テーマを設定
しているからです。
言い換えれば会社としての方針が明確であり、社員の立場からすれば
先の見通しが立つことにつながります。人間は先の見通しが立たない
と不安になる生き物ですが、先の見通しが立てばモチベーションも上
がりますし、ベクトルも一致するようになります。

さらに先ほども述べたとおり、今の時代は顧客の良し悪しが単純に業
界で語れなくなってきています。同じ業界であっても、業績の良い会
社と悪い会社で大きな差がついています。既存顧客・新規顧客含めて
再度ターゲティングを行い、いわゆる「勝ち組」顧客に対しては営業
フォローを徹底的に行ない、「苦戦組」顧客については最低限の営業
工数でフォローを行なうべきです。
そうした意味で市場・顧客の見極めと同時に、経営トップ自身による
戦略的テーマ設定が重要になってくるのです。

生産財マーケティングのことなら生産財マーケティング.COM>>> https://seizougyou-koujoukeiei.funaisoken.co.jp/

製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る

関連記事

アクセスランキング

製造業・工場経営.comを運営する船井総合研究所が提供する各種サービス

ものづくり経営研究会オンデマンド
ものづくりグロースクラウド

無料経営相談の
お問い合わせ