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片山和也の生産財マーケティングの視点【設備で差別化するか、人で差別化するか】

今ある政府系機関からの依頼で、中小製造業の海外進出の実態につい
て調査を行なっています。その調査の中で興味深い傾向がでているの
ですが、海外ビジネスで利益を上げている中小製造業の大半が、国内
でモノづくりを行なった上で、海外で販売を行っているということな
のです。逆に工場を海外につくり、モノづくりも海外で行なっている
ケースというのは、利益につながっていないケースが多いのです。

また先日、私の著書“技術のある会社がなぜか儲からない本当の理
由”を読んだ金型工業会の役員の方から、講演依頼がありました。そ
の理由として、「国内で金型をつくっていても生き残れない」と、海
外に工場を移す中小金型メーカーが多いのだそうですが、そのほとん
どがうまくいっていないというのです。それで「やはり国内での生き
残りをもっと真剣に考えなければならないのではないか?」と思って
いたところに、私の著書を読んだということなのです。

これは私の見解ですが、中小企業が国内で生き残るためには「設備で
差別化」するだけでなく、それに加えて「人で差別化」するしかあり
ません。
例えば価格競争に苦しむ、エルピーダメモリやルネサステクノロジー
などのエレクトロニクス産業は生産設備メインの産業です。最先端の
半導体工場でも中で働いている人の大半は派遣会社や請負会社の社員
です。
それに対してファナックやアマダなど、円高・欧州経済危機といった
逆風下でも高収益を上げている会社は、生産設備はもとより加工・組
立そのものに職人的な技術・技能が求められます。つまり人が差別化
されているわけです。

例えば私の関係先の従業員80名の治具メーカーは、年内の仕事はほ
ぼ見通しがついています。同社の得意分野は治具の中でも難しい4
軸・5軸といったインデックス治具です。XYZ3軸に加え、B軸・
C軸といった回転軸が付加されると途端に精度を維持することが難し
くなります。こうした治具は高精度な工作機械だけを導入しても製造
は不可能です。つくる人が差別化されていないと生産ができないので
す。

同様のことは販売会社にもいえることです。私の関係先の北信越A社
は、地域内では3~4番手クラスですが業績は昨年対比130パーセ
ントをつけています。その秘密は同社の教育にあります。ライバルの
地域一番店がサラリーマン的な営業マンが多い中、同社の営業マンは
経営者感覚・商売人感覚を重視した教育を行なっているのです。そう
した姿勢が、零細・中小鉄工所がメイン顧客となる北信越エリアでは
受け入れられているということです。

歴史は60年周期であり、激動の時代⇒教育の時代⇒経済の時代⇒大
衆の時代⇒権力の時代 を経て、また激動の時代に戻ると言われてい
ます。明治維新が1868年でその60年後が大恐慌の1928年、
さらにその60年後がバブル崩壊直前の1988年であり、そう考え
れば今の時代は「教育の時代」に他なりません。

いかに人で差別化していくか、今、経営者・リーダーが考えるべき最
重要テーマだと思います。

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