片山和也の生産財マーケティングの視点【生産財企業に求められる一番化】
生産財業界は活況の企業とそうでない企業とで、大きく二極化されて
います。
今、活況を呈している企業というのは、中国に代表される新興国向け
ビジネスで成功している会社です。中国マーケットの市場規模は日本
と比較して自動車の場合で約3倍、工作機械で約50倍ですから、そ
のインパクトの大きさがわかります。
例えばボールネジは今、非常に品薄の状態が続いていますが、これら
は全て中国市場での需要によるものです。同様に制御装置や電機部品、
コンポーネントも品薄の状態が続いています。
その国の豊かさを表わす指標として、国民1人あたりGDPという概
念があります。国民1人あたりGDPが3000ドルを越えてくると
消費が劇的に増大し、具体的には一般の人が自動車を買うようになっ
てきます。中国の国民1人あたりGDPは2010年には4000ド
ルを突破すると言われていますから、世界の工場としての中国の位置
づけに加え、中国そのものでの需要もしばらくは増大しそうな勢いで
す。
それに引き換え、内需を中心とする産業は不振に苦しんでいます。大
手工作機械メーカーでも、森精機製作所やヤマザキマザックの国内工
場の汎用機ラインはピーク時の6割前後の稼動と伝え聞きます。
現在の内需不振を見ていると、日中戦争から太平洋戦争へと突き進ん
でいった1920年代の日本も、現在と同じような経済事情が背景に
あったであろうと推察されます。
当時としても不況を打破するためには海外での利権確保しかない、と
考えた点で、現在の日本と状況が非常に近いのではないかと思います。
当時であれば戦争に訴えたことが、現在は各国ともに経済的手段でも
って解決を迫られているわけです。そう考えれば、現在の内需・欧米
不況はしばらく続くものと覚悟しなければならないでしょう。
そうした中、企業が今取り組むべきテーマは、その企業規模によって
も異なるようです。例えば大手企業であれば海外企業も視野に入れた
「M&A」でしょうし、中堅企業であれば本格的な「海外進出」であ
ると言えるでしょう。
では中小企業が取り組むべきテーマは何かと言われれば、それは
「差別化」ならぬ「一番化」だと考えます。
つまり、「この分野であれば絶対に他社には負けない」という絶対的
「一番」の分野をつくるということです。
今は価格競争が厳しい時代ですが、価格でひっくりかえした案件とい
うのは、必ずいつか価格でひっくりかえされます。つまり価格勝負と
いうのは本当の意味での「価値」ではないわけです。
顧客から見た、本当の意味での自社の「価値」が何なのかということ
を考え抜き、今の時代こそ「一番化」を進めていかなければなりませ
ん。
この「一番」というのは、例えばメーカーであっても必ずしも技術だ
けとは限りません。スマイルカーブの概念によれば、「技術」同様に
「営業」「サービス」が重要な要素と位置づけられています。
さらに現在のような成熟化社会になってくると、「技術」以上に「サ
ービス」や「営業」の新しいビジネスモデルが差別化要素となりえま
す。
経営コンサルタントとして多くの会社を見ていて感じることは、やは
り「一番化」されている企業、あるいは人は強いということです。
何かの分野で「一番化」に取り組み、1年でも経過すればそれだけで
ライバル企業の追随が難しくなるくらいの差は、つけられるはずです。
ぜひ自社の長所を見つけていただき、「一番化」に取り組んでいただ
きたいと思います。
生産財マーケティングのことならB2Bダイレクトマーケティング.COM>>> https://factory-business.com
製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る