片山和也の生産財マーケティングの視点【生産財メーカーに求められる固定費の流動費化】
新興国需要以外は厳しい状況が続く生産財業界ですが、先日定期支援
に伺った熱設備メーカーは非常に忙しい状況です。同社は非鉄金属素
材を中心とした熱処理炉が主力商品ですが、こうしたノウハウの集積
ともいえるニッチな分野は底堅いニーズがあるようです。
例えば同じ搬送設備でも一般搬送設備に関していえば熾烈な価格競争
が続いています。ところが熱設備内の搬送設備というのは、例えば1
50度の雰囲気中でワークの搬送を行なう、といった特殊な搬送にな
ります。通常温度の搬送であればできるメーカーが多数ありますが、
150度の中で搬送といった途端にできるメーカーが限られてくるわ
けです。いわば差別化です。
しかも、こうした高温内における搬送設備が技術的に難しいかという
とそではなく、逆に熱に対応して伸び縮みするよう、ラフな精度でつ
くる必要があるのだそうです。例えば穴にしてもバカ穴にしておいて、
熱で部材が伸びても破断したり曲がったりしないように、余裕をもた
せておくのだそうです。いわばノウハウです。
こうした独自のノウハウにより差別化している同社ですが、昨年の今
頃は数ヶ月間にわたり、受注がほぼゼロの状態が続きました。
しかし同社の場合は従業員40名全員が、熱設備の定期点検を行なう
ことができます。熱設備はJISにより定期点検が義務付けられてい
ますから、点検は安定収入になります。
設備受注がゼロの時には全員が点検の仕事をとりにまわり、先期決算
は売上3割ダウンながら、利益は横ばいで着地しました。給与カット
も行なっていません。
また、自動車業界を中心とした測定機関連のセットメーカーである某
社は、従業員40名のうち10名が営業です。この会社の場合、仕事
の無い時は営業が営業活動にまわり、忙しくなると営業が現場に入っ
て製缶作業や塗装作業を行ないます。
この会社は8月決算ですが、売上は3割減りましたが利益は逆に増え
ました。結果的に内製化がすすみ、外注費が激減したからです。
両社ともに熱エンジニアリング・ある分野の測定技術といった差別化
要素がありますが、それ以上に不況時において「固定費を流動費化」
する術を持っているところがポイントです。
こうした固定費の流動費化は、言うのは簡単ですが実際にそれを行な
うのは大変なことです。普通、現場は現場で職人気質、設計は設計、
営業は営業と、そうしたセクショナリズムが働くのが普通です。
現場の人に「営業にまわれ」というと、「なら辞めます」というケー
スがほとんどです。
両社に共通することは両社ともに新卒採用が採用の中心です。新卒も
中途もそれぞれの良さがありますが、経営者の思想をより反映しやす
いのは新卒中心型の組織でしょう。
今、好調な生産財企業は表面的には差別化要素や特殊な技術があるよ
うに見えます。しかしその根本の部分には、業界の常識にとらわれな
い、その会社独自のイデオロギーが存在するのです。
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