片山和也の生産財マーケティングの視点【好業績の会社は常に“攻め”の姿勢】
不況期の今でも、好業績の会社は“攻め”の姿勢が明確です。
例えば静岡県にある従業員100名のK工業というプレス加工会社は、
多くのプレス加工会社が赤字で苦しむ中、現在も好業績で2交代制で
ラインを動かしています。10月以降の自動車販売の落ち込みの中、
2交代でラインを回しているプレス加工会社は稀有な存在です。
K工業は某大手自動車メーカーのすぐ近所にありますが、K工業はそ
の自動車メーカーの仕事は一切受けていません。その理由は、その自
動車メーカーは「下請けは指示通りに仕事をすればよい」という考え
方で、新しい技術・加工法を提案しても受け入れてくれないからです。
K工業の強みは提案力であり、例えば従来は3つの部品から構成され
ていた自動車部品を、プレス加工により1つの部品に集約することで、
設計段階からのコストダウン提案を行ないます。
同社は海外移転は行なわず国内で生き残ることを決断し、その為の差
別化要素として、顧客企業に対する設計段階からのコストダウン提案
と、徹底した自動化ラインを武器としているのです。
また京都にある従業員40名の部品加工業、K製作所も同業他社がピ
ークの半分という売上減少の中、K製作所はピーク以上の仕事を抱え
連日残業を続けています。やはりK製作所の方針も徹底的な“攻め”
であり、やはり顧客企業に対する設計段階からのコストダウン提案を
売りにしています。この両社に共通していることは、“下請け企業”
であるということです。ただし自社製品にはこだわりを持っており、
自社製品のことを両社ともにPB(プライベート・ブランド)商品と
呼んでいます。
つまり単なる下請け作業で指示通りにつくった製品ではなく、自社の
提案が盛り込まれたオリジナル商品であるという意識の表れです。さ
らに両社とも数年前から“新規開拓”に力を入れています。つまり以
前にも申し上げた「緊急度が低く重要度の高い仕事」を重視している
ということです。さらに両社には同業他社に無い大きな特徴がありま
す。
それは管理職の平均年齢が若い、ということです。一般的にプレス加
工や機械加工は経験が重視され、職人も高年齢となりがちですが、こ
の両社の課長クラスはいずれも20代後半から30代半ば、統括する
部長クラスも30代後半から40代前半といった若さです。
製造業だけでなく、販売会社の現場を見ていても同じです。今の時代
は不況期と言われていますが、それでも成果を上げているのは20代
後半から30代半ばの若手中堅クラスです。逆に数年前に実績を上げ
ていたベテランクラスが、今は数字を落としているケースが多々、見
受けられます。それは、若手は新規開拓や新商品に対して熱心に取り
組むのに対して、ベテランは楽な立場に安住していることが原因だと
私は思います。
ビジネスにおける成功要因は、「経験」と「情熱」のバランスです。
前述の若手管理職の場合、この道何十年の職人と比較すれば経験は無
いかもしれません。しかし新しい技術に取り組む、新しいお客に取り
組むという「情熱」の面でベテランに勝っているのです。
例えば前述の機械加工業、K製作所のケースで言えば、この会社は新
規引合いの大半を自社ホームページから取っていますが、基本的にど
んな難しい問合せであったとしても断りません。納期の問題で一時的
に断ったとしても、後日「時間はかかりましたが製作してみました、
見てください」と、その顧客を訪ねるようにしています。
片や同じようにホームページから問合せがきても、「これはうちには
無理だから断りました」とあっさり言うリーダーもいます。このリー
ダーはこの道30年のベテランですが、要は情熱が無いのです。情熱
の無いリーダーの部下も同じように情熱が有りません。
「初心忘れるべからず」の意味は、情熱を忘れるな、という意味です。
私は年をとっていることがダメだと言っているのではありません。今
の厳しい時代、リーダーには経験以上に情熱が必要だと言っているの
です。
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