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片山和也の生産財マーケティングの視点【中国リスク】

数年前までは中国の好況も北京オリンピックがピークで、上海万博あ
たりで景気が失速するのではないか、という見方がされています。
しかし今や、生産財業界に関わる大半の人が「あと10年は続くだろ
う」「少なくとも3年は続く」と、中国市場の勢いに対して楽観的な
見方をされている方が多いといえます。

新聞などを見ると「今年の後半くらいから景気が回復する」といった
論調もありますが、生産財業界においては今この瞬間、景気が良いと
思います。そして需要の大半は中国です。

しかし気がかりな点もあります。昨年の10月、私の関係先の部品加
工業の会社が、北京に独資で現地法人をつくりました。業務としては
CADのトレース及び現地日系企業への調達窓口としての役割ですが、
そこで3名ほどのCADオペレーター候補の求人をかけました。

すると、3日間でなんと120人もの求人が集まったそうです。中に
は通勤時間が32時間と書いている人もいて、どうやって通勤するの
かわかりませんが、恐らく採用が決まれば近くに住むつもりなのでし
ょう。

このような現象が起きる理由は、中国において大学を出ても就職先が
中々見つからない点にあります。中国では経済成長を背景に、国中に
大学が新設されました。また一人っ子政策の影響もあり、親は子供に
学歴をつけようとします。ところが大学出身者を吸収するほど社会が
成熟していないので、大学を出てもそれにふさわしい勤め先が無いの
です。

逆に工場の工員など、低賃金ブルーワーカーの仕事については人手不
足の状態です。こうした歪が、今の中国では起こっています。

話がすこしそれますが、そもそもなぜCADのトレースが必要なのか
というと、大手企業は設計をCADで行いますが、情報保護の観点か
ら電子データを外に出したがらないそうです。ですからせっかくCA
Dで設計したものを紙にプリントアウトし、それを協力会社にFAX
あるいはPDFでメールするという、発注をしているのです。
これではCADの意味がありませんし、協力会社でまたCADデータ
をつくるという二度手間が発生します。3次元データならともかく2
次元CADデータにどこまで機密性があるのか疑わしいところですが、
生産性を下げて余計な手間をかけさせていることは間違いないところです。こうした不必要なまでの守りの姿勢が、今の日本の課題でしょ
う。

話を戻しますが今の中国の課題は、こうした高学歴若年層の失業問題
です。今、北アフリカではチュニジアでのデモを発端に、エジプト、
イエメンとデモが拡大しています。

民主化運動と言われていますが、実際には若年者の失業率が高い国か
ら順番にデモが発生しており、民主化以前に「仕事」と「食料」を求
めてのデモだといえます。しかもツイッターやWebなど、情報の伝
わり方が今までとは比較にならないため、当局が手を打つまえにデモ
の波が広がっていったわけです。

このようなリスクはありますが、製造業あるいは生産財業界にとって
中国は無視できない市場です。中長期的には必ず関わらなければなら
ない国だと思いますが、しかしチュニジアやエジプトのようなリスク
も同時に考えて施策をうつべきでしょう。

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