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片山和也の生産財マーケティングの視点【産業構造の変化にどう対応するか?】

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生産財業界の市況が徐々に回復してきました。例えばある大手直動シ

ステムメーカーの場合、稼動がピークの8割前後にまで回復してきた

とのことです。

直動システムは工作機械や半導体製造装置など、あらゆる生産財に使

用される機械要素ですから、同社の稼動状況をみれば生産財業界の市

況もわかります。例えば同社の場合、昨年12月はピークの6割の稼

動でした。同社に限らず、機械要素(歯車・締結部品・アクチュエー

タ等)を製造している会社は、だいたいピークの8割くらいに回復し

ている模様です。

ただし、各社ともに収益構造には変化が見られます。例えばある制御

機器メーカーの場合、出荷台数ベースでみればピーク時と同じ台数を

こなしているのに対し、出荷金額でみるとピーク時の8割です。つま

り商品単価が下落しているわけです。これはコストダウン要求への対

応と同時に、ローコスト機種が売れているという傾向を表わすもので

しょう。

これは生産財業界だけの話ではありません。先日、ある中堅の印刷会

社の役員の方と話をしましたが、先月は30,000版の印刷をこな

したけども売上10億円には届かなかったと。従来、22,000版

も印刷すれば売上10億円を超えていたのに、やはり価格競争の影響

が出ていると話されていました。

このような現象を「デフレ」と片付けてしまえばそこまでですが、い

わゆる日本にとっての「産業構造の変化」と捉えなければならないの

ではないでしょうか。

産業構造の変化とは何か。例えば私の後輩で、実家が農業なのですが、

刺身を盛り付ける時などに使用する食用の花を栽培しているという家

があります。彼の実家は元々養蚕家で、かつては蚕(かいこ)から

“まゆ”を生産していたのだそうですが、1970年代になって中国

の農家に太刀打ちできなくなり、盛り付け用の食用花の栽培に切り替

えたとのことです。例えばこうしたことも、産業構造の変化に対する

対応策の一つでしょう。つまり、より付加価値が高く、地の利が行か

せるビジネスに転換してかなければ、国内では生き残れないというこ

とです。

デフレは一つの時流ですから、いずれ収束すると思います。景気もい

ずれ良くなるでしょう。

ただし産業構造の変化に対応するビジネスモデル、具体的にはIT化、

自動化による原価低減を考えていかないと、今までのビジネスプロセ

スを全面的に見直していかないとだめでしょう。

例えば私の顧問先の専用機製作会社(エンジニアリング会社)の場合、

ソリューションサイトを立ち上げて営業プロセスを見直すと同時に、

情報発信を行うことで逆に情報収集が行えるようになった結果、ハイ

ブリッドカー関連の新たな設備案件を受注することができました。

従来は資材からの引き合いに対応するビジネスモデルであったため価

格競争に巻き込まれがちでしたが、今回は開発段階から共同で行うこ

とにより、不要な価格競争を避けることができました。

とはいえ、客先からのコストダウン要請も強いことから、同社では新

たに設備投資を行い、内製化を進めることで原価低減を図る計画です。

また、エアシリンダに代わる電動シリンダのトップメーカーであるア

イエイアイ社の場合、現在の生産台数を倍増させる能力を持つ新工場

を年内に着工する予定であると、日刊工業新聞で報道されていました。

同紙によれば新工場は24時間稼動の無人工場であるとのことですが、

工場のエアレス化を見越したこうした決断も、産業構造の変化に対応

するものだと思います。

船井総研の創業者である船井幸雄は、「変身商法」という本を出版し

て30万部を超えるベストセラーとなり、全国的に知名度を上げるき

っかけとなりました。また「旧約聖書」と並ぶ古典として、中国の

「易経」という書物があります。いずれも紀元前3世紀ほどに書かれ

たとされていますが、易経は英語に訳すと“ブック オブ チェンジ

ズ”となり、つまり変化の書という意味です。アメリカのオバマ大統

領は“チェンジ”という言葉で当選しましたが、今から2000年以

上昔から変化の必要性は言われ続けてきたわけです。

ピンチをチャンスにできるとすれば、それは時流に合わせて変身を遂

げることができる時ではないでしょうか。

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