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片山和也の生産財マーケティングの視点【価格競争から抜け出すスマイルカーブの概念】

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コンサルティングをスタートする際に、その会社の社員に対してヒア

リングを行うのですが、最近の傾向として幹部クラスほど悲観的で、

若手ほど現状の打開に問題意識を持っている傾向があります。

 

先日も、ある部品加工メーカーのコンサルティングを行った際、同じ

傾向が見られました。一般に部品加工というのは精度的に3/100

mmくらいのところを狙うのが大半です。ミクロン台というのは1/

100mmより高い精度要求ということになりますが、そうすると製

造コストが高くつくため、機械設計においては3/100mmくらい

を狙うのです。

 

ところが、このレベルの精度であれば、今や日本でつくっても中国で

つくっても品質は変わりません。そうすると価格で中国に太刀打ちで

きないから日本に勝ち目はない、というのが大半の見方なのです。

しかし本当にそうでしょうか。

 

日本企業にとっての一番の強みは日本にあることであり、日本語が話

せることにあります。この強みを生かすためには、例えば部品加工業

の場合はユーザーの設計開発段階から、関わる必要があります。

 

先進国の産業構造を考える上での概念として、スマイルカーブという

考え方があります。これは製造業のサプライチェーンが 「開発」⇒

「設計」⇒「加工」⇒「組立」⇒「販売」⇒「サービス」から構成さ

れており、最も川上行程にある「開発」「設計」や、川下行程の「サ

ービス」が付加価値が高くなり、真中の「加工」「組立」は付加価値

が低くなる、すなわち付加価値のカーブが川上と川下ほど高くなると

いう、“スマイルカーブ”を描くという考え方なのです。

 

例えば図面支給でのみ加工を行う部品加工業、あるいはセットメーカ

ーというのは真中の「加工」「組立」しか行いませんから付加価値が

低く、言い換えれば価格競争に巻き込まれることになります。

しかし同じ部品加工であっても、設計者の「難削材で高精度な複雑形

状をつくりたいが、どうすれば最もローコストかつ高品質に生産でき

るのか」というようなニーズをキャッチし、かつ適切な提案が行えた

ならば、川上の「開発」「設計」から関与できることになり、価格競

争を回避することができます。

あるいは川下の「サービス」を事業化できているセットメーカーは、

不況期でも経営的に安定を得ることができます。

 

かつて日本がナンバーワンだった金型製作が中国に移転した要因とし

て、私は技術ノウハウの流出よりも金型製作が「加工」のみのプロセ

スとなってしまったことが大きいと思います。なぜなら、3次元製品

データさえあれば、あとはソフトウェアで金型は自動設計することが

でき、NCプログラムもソフトウェアで簡単にできてしまいます。特

に樹脂型(モールド型)の場合、どんなに複雑な形状であっても一型

で製品ができてしまいますから、そこに人的ノウハウが入り込む余地

が低いのです。

中国の加工メーカーは、図面支給であれば良い仕事をします。しかし

設計者のニーズを汲み取り、適切なアドバイスを行って最適な図面を

つくることはできません。つまり「開発」「設計」のプロセスで勝負

していかなければ、先進国で勝ち残ることは難しいでしょう。

 

2009年から明らかに産業構造が変わりました。この変化を生き残

るヒントは“スマイルカーブ”の概念にあるのではないでしょうか。

 

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