来週10月30日から11月4日の1週間、東京ビッグサイトでJIMTOF2014(日本国際工作機械見本市)が開催されます。
今回のレポートではJIMTOF2014の視察のポイントについてお伝えしたいと思います。
(1)世界3大工作機械見本市JIMTOF
JIMTOFは2年に1回、東京で開催されます。かつては東京・大阪の相互開催でしたが、現在は東京ビッグサイトでのみ開催されています。
JIMTOFはアメリカシカゴで開催されるIMTS(通称シカゴショー)、イタリアミラノとドイツハノーバーで相互開催されるEMOショーと並び、世界3大工作機械見本市と言われています。
シカゴショーもEMOショーもJIMTOF同様、2年に1回の開催で、シカゴショーとJIMTOFは同じ年に開催されています。
シカゴショーが商談に重きを置く、ビジネスショーとしての側面が強いのに対し、JIMTOFやEMOショーは世界初の新製品をお披露目する技術的な側面が強い展示会であると言われています。
しかし近年ではJITOFでもマッチングシステムの導入を行うなど、ビジネスショーとしての側面を強める動きが見られます。
今回2014年のJIMTOFは出展社数が前回よりも50社多い865社、来場者は13万人を見込んでおり、過去最大規模となる見込みです。
(2)西館が工具関係、東館が機械関係の展示
JIMTOFは東京ビッグサイトほぼ全館を使用して開催されます。
東京ビッグサイトは大きく西館と東館に分かれており、西館と東館は動く歩道で連結されていますが、移動には10~15分程度かかります。
JIMTOFでは西館では主に工具・測定器・治具・工作機器・各種ユーティリティー関係の展示、東館では工作機械・CAD/CAMの展示がされています。
また西館と東館を結ぶ通路の途中には、カタログ出展や産学交流関係の展示、世界各国の工作機械工業会の展示がされています。
開催時間は9時から17時までですが、東館は12時~15時の間は非常に混み合います。特にファナック・ヤマザキマザックのブースは移動も困難なほど混み合います。
それに対して西館は東館と比べると混み方は軽く、移動に困難をきたす様な混み方はまずしません。
従って、朝9時~10時の比較的人が少ない時間帯にファナック・ヤマザキマザックといった人気のブースを視察し、混雑がピークとなる昼過ぎからは西館を視察する、という視察のやり方が良いでしょう。
(3)展示会視察の鉄則は事前の予習
展示会の視察の鉄則は、事前の予習に尽きます。具体的には、展示会でどのブースを見に行くのかを事前に決めておくことです。
JIMTOFの場合は特に展示規模が大きいため、1日で全てを視察することは不可能です。東館を視察するだけで丸2日は必要でしょう。
事前にガイドブックを入手するか、またはJITOFオフィシャルサイトを参照して、どのブースを見るのかあらかじめ決めておかないと有意義な視察を行うことはできません。
次項から、今回のJIMTOFの見どころについて説明していきたいと思います。
(4)今回のテーマは「使いやすさ」と「自動化」
JIMTOFの出展傾向を見る上で参考になるのが、JIMTOF開催の3ヶ月前に開催されるシカゴショーの傾向です。
今回のシカゴショーでは「使いやすさ」「自動化」が出展社のキーワードとなっていました。
「使いやすさ」が注目される要因として、ここ近年の複合加工機・5軸加工機のブームが挙げられます。複合加工機も5軸加工機も、ともにいかに稼働率を上げるかがポイントになります。稼働率を上げる上で大切なことは「使いやすさ」です。
特にマンマシンインターフェース(制御装置)の「使いやすさ」が求められます。
そうした意味で注目を集めるのがヤマザキマザックのマザトロール・スムースエックスです。またDMG森精機もタッチパネルの新オペレーティングシステム、セロスを出展します。
またキタムラ機械は、3Dスキャナーから自動的にプログラムを組む制御装置アルマティック-Miを展示します。
さらに今回の傾向として「自動化」を挙げることができます。
(5)工作機械のモジュール化を進める富士機械製造ドルフィン
インラインの「自動化」で注目を集めるのが、富士機械製造のDFLn(ドルフィン)です。ドルフィンは、土台の上に様々な装置を載せかえることができ、機械の幅は450mmという省スペースです。
こうしたモジュール化は実装機の世界では既に一般的となり、富士機械製造はモジュール化の概念で高価な実装機のコストを下げることに成功、シェアを大きく伸ばしました。
今回のドルフィンはこうした実装機のノウハウを工作機械に適用したものです。従来の高価なトランスファマシンからのコストダウンが期待されるコンセプトです。
(6)注目されるロボット「自動化」技術とリモートサービス
毎回JIMTOFで高い人気を誇るブースがファナックです。ファナックのブースでは最新のロボットアプリケーションが展示されデモが行われています。JIMTOFにおいてファナックのブースは必ず訪れるべきでしょう。
またファナックの調査によれば、今回のシカゴショー会場内で稼動していたロボットの台数は300台と、前回の200台から100台も増えている、とのことです。
アメリカではここのところ、リショア(回帰)というキーワードが盛んに言われています。その為には自動化が必要、ということでロボットに急速に注目が集まっているということなのです。
さらに「自動化」を支えるのが機械の遠隔管理機能・リモートサービスです。具体的には稼働率向上に寄与する機能や、機械が壊れる前にその兆候を見つける、といったソフト面の機能です。
ハード面では、メンテナンス時にワンタッチで修理できる様にする機能が求められます。
特にDMG森精機のブースではDMG MORI Systemsというコンセプトで、「自動化」を訴求された展示がされています。
(7)「自動化」を進める手段としての「複合機」
また「複合機」も「自動化」を進める手段の1つです。
今、儲かっているジョブショップ(町工場)の共通点は、複合機をうまく使いこなしている会社です。
なぜ「複合機」が儲かるのかというと、いわゆる“かけっぱなし”にできるからです。
また旋盤工程とマシニング工程を統合することにより、リードタイムの短縮が図れます。従って加工見積りよりも低いコストで加工を行うことが可能になり、その結果として価格競争力を身につけることができるのです。
さらに「複合機」は導入してから使いこなすまでにハードルがあります。まず大変なのがプログラミングで、さらに刃物やツーリングの干渉などの検証が大変です。従って「自動化」ともう1つのテーマである「使いやすさ」が大切になってくるのです。
(8)複合機で注目すべきはヤマザキマザック・DMG森精機・オークマ
その点、導入してから最も立ち上がりが早い複合機がヤマザキマザックのインテグレックスです。
ヤマザキマザックのブースも、ファナック同様に必ず訪れるべきブースの1つです。
ヤマザキマザックがソフトで勝負するのに対し、ハード面で最も剛性が高い複合機と言われるのがDMG森精機のNT・NTXシリーズです。
またオークマのマルタスUは、複合機でダブルヘリカルギアの歯車加工を複合機で行うアプリケーションを発表します。専用機の代わりに複合機を活用することで、トータルにコストダウン提案を行うというコンセプトです。
さらに中村留精密工業も複合機に強いメーカーです。特に同社は複合機を活用して医療機器分野の加工事業への参入を発表しており、医療機器分野へのアプリケーションが注目すべきポイントでしょう。
(9)ターゲット業界はエネルギー・航空・自動車
今、特に北米市場において伸び盛りなのがエネルギー産業・航空機産業といった大型工作機械の分野です。
従って今回のJIMTOFでは各社、大型機のラインナップに力を入れています。
例えばオークマでは、同社初となる大型横型マシニングセンタでテーブル角1250mmのMA―12500Hを初披露します。
また大型旋盤・立型ターニングの分野では、ホンマ・マシナリーのブースは必見でしょう。
さらにこうした大型・重切削加工における切削工具・ツーリングのパイオニアはサンドビックです。またサンドビックのCAPTは、今や複合加工機の標準ツーリングの地位を確立しています。
切削工具メーカーの中では、サンドビックのブースも必ず訪れるべきだと言えるでしょう。
(10)JIMTOFにおける3Dプリンタ技術の動向
JIMTOFにおける3Dプリンタ技術の中で、特に注目を集めるがアディティブ・マニュファクチュアリング(金属積層技術)、通称AM技術です。
AM技術のパイオニアは松浦機械製作所です。またDMG森精機、ヤマザキマザックもAM技術を搭載したマシンの展示を行います。
各社ともにAM技術は工作機械に対抗する概念ではなく、将来は工作機械のオプションの1つになるとの見解です。
(11)総括
日本を始めとする先進国の工作機械メーカーがいかに韓国や台湾など新興国のメーカーと差別化を図るのか?
その答えが今回のテーマである「使いやすさ」と「自動化」です。
またオークマではIMTS2014のブースでの受注が、前回の2倍だったといいます。米国現地の業界関係者によると、現在の好調は少なくとも2年くらいは続くと、かなり強気の見解を示しています。
今回のJIMTOFは大盛況が予想されます。
また機械工具商社や部品加工業など、生産財業界関係者にとってJIMTOFは必見の展示会です。
社内のキーマンだけでなく、できれば全社員でJIMTOFは視察した方が良いでしょう。百聞は一見にしかず、という言葉がありますが経営者ご自身の視野はもちろんのこと、社員の視野を広げるイベントは計り知れない効果があります。
その予習の材料として、本レポートがお役に立つことを心から願っています。
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