ドイツグレートカンパニー視察セミナーレポート:5日目(2018年 4月27日 金曜日)
視察7社目:roger Elektronikbauteile GmbH
(1)roger社の概要
- 同社はフランクフルト近郊に本社・工場があり、グループ従業員400人の制御盤BOXメーカーである。本社は敷地面積2万平方メートル、本社事業所の社員は50人である。
- ドイツ国内の他にポーランドにも工場があり、売上高はグループで3900万ユーロ。今期は4000万ユーロの売上を見込む。
- 顧客はオーティスエレベーターといった大手企業をはじめ、鉄道向けやIT業界など多岐にわたる。
- 特にIT業界向けのオーダー制御盤BOXの生産に強みを持ち、「ハイテク保護のワンストップサプライヤー」を志向している。
(2)同社の生産システム
- 板金から溶接、組立、塗装、シルク印刷まで、制御盤BOXの製造に必要な工程は全て内製している。制御盤BOXの外装に用いる、シルク印刷の版の製作までも内製している。
- また従業員の数に対して加工設備数が多く、いわゆる労働装備率が高い。
- 多品種少量のオーダー性の高い仕事はドイツ国内の本社で行い、数出る量産の仕事はポーランドで行っている。仕事の付加価値によって生産する場所を変えている。
- 本社工場も従業員50人に対して、敷地面積が2万平方メートルと広い。日本の工場と比較して土地がふんだんにあり、スペースの使い方はぜいたくである
- バーコードリーダーで管理された作業票がワークには貼られている。「インダストリー4.0を取入れているか?」との質問に対しては、「これからだ」とのこと。
(3)同社の経営方針
- 工場視察後、同社社長のスタインバッハ氏から講演を受けた。
- 毎年計画的に投資を行っており、投資は継続的に行っていく方針である。本社においてもストッカー・ローダー付の複合機を設置、また自動倉庫を保有するなど、自動化を意識して行っている。
- 同社のビジネス・ドメインは「ハイテク保護のワンストップサプライヤー」である。新しい分野も積極的に手掛けている。最近では大型デジタルサイネージの仕事を請負い、屋外での耐久検査なども代行して行っている。
- 内製率が高く制御盤BOXへの一貫生産を実現していること、ポーランドなど周辺国をうまく活用していること、また大手ハイテクメーカーと直接取引を行うことが、同社の強みである。
- ドイツの中小企業法では、従業員500名未満を中小企業と定義している、そうした意味で同社はドイツの中小企業である。
視察8社目:Arend Prozessautomation GmbH
(1)同社の概要
- Arend社はインダストリー4.0を推進するための、あらゆるサービスを提供するシステムエンジニアリング会社である。経営陣はほとんどが博士号を保有するエンジニアである。
- 従業員は35名。創業は1987年である。
- 同社は現場のあらゆる機械・設備をつなぎ、生産管理システムやさらに上位レベルのERPなどをつなぎ、統合するシステム技術のノウハウを持つ。
- 受託でオーダーメイドのサービスを提供する一方、現場における機械・設備からの情報収集ユニットといった自社オリジナル製品も持つ。
(2)成長著しい同社
- 現在の同社の従業員数は35人であるが、来年は50人に増える。また来年はビルを新築して本社を移転する予定。
- 昨年度の売上400万ユーロであったが、今年度は500万ユーロ(約6.8億円)になる見込み。ここ数年は毎年2割成長で業績が伸びている。
- ERPを提供するSAP社に対して、同社の場合は現場に強いシステムエンジニアリング会社である。ドイツにおけるインダストリー4.0の推進の舞台裏には、同社の様な中小システムエンジニアリング会社の存在が挙げられる。