ドイツグレートカンパニー視察セミナーレポート:4日目(2018年 4月26日 木曜日)
視察6社目:ハノーバーメッセ
(1)ハノーバーメッセの概要
- ハノーバーメッセは東京ビッグサイトの約5倍の面積を持つ見本市会場で、全世界から約30万人の集客を誇る、世界最大の総合産業見本市です。
- ハノーバーメッセの会場は、大きくテーマごとに次の5つに分かれている。
① Integrated Automation, Motion & Drives
② Digital Factory
③ Energy
④ Industrial Supply
⑤ Research & Technology - 2018年のハノーバーメッセのテーマは前回に引き続き「インダストリー4.0」である。
(2)インダストリー4.0:シーメンス社ブース
- インダストリー4.0の中心企業の1社であるシーメンスは、ハノーバーメッセの中でも最大の展示面積を誇る。
- シーメンス社のブースのコンセプトは大きく2つ。1つ目はデジタルとハードの融合。デジタルの世界で事前にシミュレーションを行い、その結果をものづくりに反映させる。
- 例えば、本来であればワーク変更に伴いラインを停止させる必要があった工程が、事前シミュレーションによりラインを停止させずシームレスに多品種少量生産が可能になる。
- 2つ目はマインド・ソフィアである。マインド・ソフィアは、シーメンス社がIoTのプラットフォームとして、広く世界に広げようとしているIoTのクラウドツールである。
- 同様のプラットフォーム(同社のライバル)として、米国GE社のプレディックスが挙げられるが、プレディックスは主にGE社製のジェットエンジン・医療機器・発電プラントをつなぐことを前提に考えている。その点、マインド・ソフィアはシーメンス製品に関わらず全ての機器をつなげることを前提に考えており、ここがGEと大きく異なる点である。
- 例えばドイツのコンベアメーカーはマインド・ソフィアを導入し、そのコンベアが故障する前に顧客に異常を知らせるサービスを始めた。製造業が単なるモノ売りではなく、サービスを売るという変革に貢献している。
- マインド・ソフィアは工場だけでなく、あらゆる産業やサービス業でも導入が進んでいる。都市の信号制御をはじめ、サッカーチームの選手の靴などにセンサーを埋め込み、最適なチームプレイを検証するためのIoTでも活用されている。
- マインド・ソフィアはクラウドであり、アマゾンのAWSやマイクロソフト社など、ソフトウェア会社とのパートナー化を推進している。
(3)インダストリー4.0:ボッシュ社ブース
- ボッシュはSAPやシーメンスと並び、インダストリー4.0の中心企業の1社である。同社は世界的な自動車部品メーカーとして知られるが、同時に工場FAシステムのメーカーでもあり、電動ドライバーなどの総合電動工具メーカーでもある。
- ボッシュ社のブースは同社のIoTモデル工場をコンセプトに、IoTによってつながる工場、その結果、かなりの多品種少量生産であっても従来よりも極めて短いリードタイムでモノづくりが行える点を強く訴求していた。
(4)最新3Dプリンタ動向
- 3Dプリンタは材料が効果であること、また加工時間を要することから従来は試作用途が多かった。
- しかし近年では航空機部品や医療機器部品など、高付加価値部品を対象として量産部品に採用されるケースも増えてきている。
- 3Dプリンタで世界トップクラスのシェアを持つ3Dシステムズ社のブースでは、3Dプリンタを並列に並べ、3Dプリンタによる無人量産工場のコンセプトを発表していた。
(5)協業ロボットについて
- 今回のハノーバーメッセの見所の1つは協業ロボットです。協業ロボットは従来の産業用ロボットと異なり、人と一緒に働けるコンセプトのロボットです。
- 従来の産業用ロボットは「人ができない仕事をさせる」ことが主旨ですが、協業ロボットは「人が行っている仕事を置き換える」ことが主旨です。協業ロボットのポイントとして、次の4つを挙げることができます。
① 人と働ける様な高度な安全対策がなされている
② 操作が容易である
③ コンパクトで可搬重量が5~10kgと小ぶりである
④ 早期の投資回収を志向している - 協働ロボットの世界シェアNo1はデンマークのユニバーサルロボット社です。
- ドイツNo1ロボットメーカーのKUKA社では、協業ロボットがビールを注ぐデモを行っていました。KUKAに次ぐ欧州トップクラスのロボットメーカーABB社では、相腕ロボットによる協働ロボットのデモが安全柵無しで行われていました。
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