ドイツグレートカンパニー視察セミナーレポート:3日目(2018年 4月25日 水曜日)
視察4社目:ユーイ
(1)ユーイの概要
- 1996年にマティアス・ヴィレンバッハーとフレッド・ユング2名によって創業された、再生可能エネルギー専門のエンジニアリング会社。
- 20年前は2人の創業者は原発反対のデモに参加していた。現在は再生可能エネルギーの技術で貢献している。かつて敵だと思っていた電力会社も現在ではビジネスパートナーになってきた。
- 同社の本社は世界一エネルギーを無駄にしない建物である。建屋の天井や壁、カーポートの屋根にはソーラーパネルを敷き詰めている。また敷地内に風力発電もある。余った電力は燃料電池によって水素に変換(パワーtoガス)して貯蔵している。
- また本社内の空調は地熱により15~20℃まで温度をあげ、壁や床・天井にパイプを通して暖房に使用している。熱交換器により、夏は冷房効果がある。照明は全てLED。
- 同社敷地内の発電能力は2.15MWであり、地元の消費電力の需要を超えている。
(2)同社のビジネスモデル
- 現在の売上は7億7700ユーロ。同社はエンジニアリング会社であり、自社で風力発電や太陽光発電をつくることはない。全て外部から調達してオーガナイズを行う。世界中からコストも含めて最適な資材を調達する。工法もパッケージ化されておりコスト競争力がある。
- 発電システムの建設に必要な許認可の申請・取得まで、全てを代行して行う。
- 海外進出も進めており、収益の半分はドイツ国外からもたらされている。例えばオーストラリアでは、同社のプロジェクトが進んでいる。鉱山の自家発電システム(ディーゼル)を、再生可能エネルギーによる発電システムに置き換えている。
- 再生可能エネルギーの中で、水力はダムをこれ以上増やせないこともあり、これ以上は伸びないと考えている。その点、太陽光と風力は今後も伸びると思われる。
(3)働き甲斐のある職場づくりについて
- 大企業であるシーメンスなどに就職ができる様な、優秀な社員を採用している。同社の平均年齢は30代である。
- 給料を上げることも大切であるが、それ以上に働き甲斐のある職場を提供することを心掛けている。例えばスポーツ施設を充実させている。
(4)同社敷地内の発電設備視察
- 講演のあと、同社敷地内の発電設備視察を実施。
- 牧草が茂る敷地内には前述の発電能力を有する風力発電機と、ソーラーパネルが数多く設置されている。敷地内では羊がはなたれ、同社の社員食堂で提供することを主な目的として農業も行われている。
- そびえたつ風車の中を視察。風車内にはメンテナンス用のエレベーターが設置され、外が肌寒い気温であったが、風車内は温度が高い。
(5)ユーイ社視察の総括
- 同社は再生可能エネルギーを産業化するという理念にのっとって運営されている。海外でのパートナー選定においても、資本力よりも理念への一致を何より重視している。
- 同社の本社社屋のコンセプトはもとより、同社の全てがそうした理念を体現している。
- ドイツで太陽光発電や風力発電に対しての、売電への補助金が施行されたのは2000年。同社の創業は1996年とそれよりも4年早く、いわゆる収益目的でつくった会社ではなく、はじめから理念の実現を目的につくられた会社である。現在の社員は、そうした同社に共感して集まった社員である。
視察5社目:リモワ
- 創業120年のスーツケースブランド。同社のケルン直営店に訪問、講演を受けた。
- 店舗の2階は同社のミニ・ミュージアムとなっており、同社の歴史を示すパネルと創業以来の同社の製品が陳列されている。
- 同社の製品は機能性・軽量化・安全性を常に追求し続けている。
- 同社が世界に飛躍したきっかけは、香港に基幹店を出展したこと。
- ケルンの同店舗の売り場は必ずしも広くない。そうした限られたスペースの中でも2階はあえてミュージアムとプレゼンスペースにしており、ストーリーを売るという同社の姿勢がわかる。