マーケティングの大家、ノースウェスタン大学のフィリップ・コトラーによると、マーケティングの核となる基本コンセプトを次のように定義しています。
「ニーズ」→「欲求」→「需要」→「製品」→「交換」→「取引」→「市場」→「ニーズ」→・・・
このように、「ニーズ」から「市場」へのプロセスが流れ、そしてまた「ニーズ」にもどるというプロセスを繰り返すというのです。つまりマーケティングの初期段階においては「ニーズ」が極めて重要であることがわかります。
マーケティングにおいて市場のニーズを想定することが非常に重要であることは、もはや常識かのごとく語られていることです。
ところが、生産財分野のマーケティングにおいてはいまだに「ニーズ」と「欲求」が混在してしまっているケースが極めて多いのです。
例えば一つ例に挙げます。ある大手生産財メーカーの販促資料の中に「振動計測機器の基礎と応用」というテーマのものがありました。中身をみると、振動計測機器をモーターや減速機に取り付け、振動が大きくなってきたらベアリングやギアが壊れる前に交換する、という要は「予知保全」を推進する内容です。であれば、私であればこの資料のタイトルを「保全コストを大幅に削減する、振動計測機器応用のポイント ~予防保全から予知保全へ~ 」とするでしょう。
振動計測機器を買う人の欲求(ウォンツ)は「振動計測機器がほしい!」ということですが、この人のニーズは「予知保全を導入したい=保全コストを下げたい」ということだからです。著書「マーケティングの革新」で知られるセオドア・レビット氏も次のように著書の中で述べています。『販売者は、しばしば欲求とニーズを混同する。ドリルの刃のメーカーは、顧客はドリルの刃に対してニーズを持っていると思うかもしれないが、顧客の本当にニーズは穴である』
このように、「ニーズ」と「欲求(ウォンツ)」は明確に異なります。マーケティングを行う第一歩は、まずここのところを認識するところから始まります。
「ニーズ」は人間が感じる欠乏状態のことを指します。人間には多くの複雑なニーズがあり、そのなかには食べ物、衣服、暖かさ、安全性を求めるという基本的な生理的ニーズと、帰属、愛情などの社会的ニーズ、そして知識や自己表現に関する個人的ニーズが含まれています。生産財マーケティングの場合は、これら3つのニーズに加えて「QCDニーズ」というものを考えるべきでしょう。QCDとは、 Q:品質 C:コスト D:納期 の略語です。つまりできるだけ品質の高いものを、できるだけ安く、できるだけ早くつくる ということが製造業のニーズなのです。
ですから生産財マーケティングを行う際には、この「QCDニーズ」に注目しなければいけません。また、生産財マーケティングにおいても「個人的ニーズ」は重要な要素です。例えば、私はコンサルティング先に対して「無料技術セミナー」や「無料小冊子」の制作を必ずアドバイスします。そしてこれらの企画は例外なく、潜在顧客の獲得に高い効果を発揮します。それはなぜか?それは、これら企画が潜在顧客の「知りたい、勉強したい」という個人的ニーズを満たすからなのです。
このように、何がニーズで何が欲求なのか、顧客視点で考えることが生産財マーケティングにおいても極めて重要なことなのです。
生産財マーケティングのことならジャパン・エンジニアリング・マーケティング.COM
製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る