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片山和也の生産財マーケティングの視点【なぜ不況期に「商圏拡大」と「新規開拓」に取り組むべきなのか】

11月に入ってから、景況感も底を打った感があります。赤字国債法
案が可決し、12月16日には総選挙も決まったことで多少なりとも
マインドが変わってきているのかもしれません。円安に振れてきてい
ることも、製造業にとってはプラス要因です。

現在の流れでいくと、今度の政権与党は自民党になるものと思われま
す。皆様もご存知の通り、自民党は「国土強靭化法案」といって、毎
年10兆円ずつ10年にわたり100兆円もの公共投資を行う計画を、
基本政策として持っています。
これは京都大学の藤井聡教授の理論ですが、10兆円の公共投資を1
0年にわたり行うと、日本のGDPは900兆円になるといいます。
現在の日本のGDPは約500兆円ですから、約倍増の経済成長です。
実際、日本がこの20年間にわたりゼロ成長できている中、主要先進
国は経済成長を実現しており、特に米国のGDPはこの20年間で倍
増しています。先進国であっても経済成長はできるのです。
企業が利益を出すことで法人税が増える方が、国としても当然のこと
ながらメリットがあるわけです。

また、基本的には不況といいながらも、全ての会社が悪いわけではあ
りません。例えば先日、電炉メーカーの中山製鋼所が私的整理を発表
しました。高炉メーカートップの新日鉄住金にしても株価は200円
をきっており、来年3月の業績も悪化が懸念されています。
ところが新日鉄の子会社である大阪製鐵は、中山製鋼所と同じく電炉
メーカーでありながら株価は1400円です。電炉メーカーは電気代
が上がって大変だと言われ、例えば電炉メーカートップの東京製鐵は
直近の四半期決算でも100億円以上の赤字となっていますが、大阪
製鐵は22億円の黒字です。業績の下方修正こそしたものの、黒字は
維持しています。この様に、「厳しい」と思われている業界の場合も
業績の良い会社は良いのです。
考えてみれば、電炉メーカーは電気代が上がって大変だといわれます
が、ところが原料の鉄スクラップ価格は大幅に下落しています。世界
的に鉄がダブついているからです。つまりマイナス要因だけでなくプ
ラス要因もあるはずなのですが、そこの部分はあまり報道されません。

また同じ電炉メーカーといえども、主力商品が異なります。業界トッ
プの東京製鐵は主に建設用の鉄骨が主体、中山精工所はコイル材が主
体です。ところが大阪製鐵の場合は設備用のアングル材やレールが主
体です。つまり前者が主に「建設」「消費財」用途なのに対し、大阪
製鐵の場合は主に「生産財」用途です。多品種少量生産が前提で、イ
ニシャルコストよりもランニングコストや信頼性が重視される「生産
財」は、日本に残る分野だということです。

現在の様な基本不景気になると1つの現象が起きます。それは儲かっ
ている会社や業界は、決して儲かっていると言わなくなることです。
全体が不景気の時に「儲かっている」というと、間違いなく「なら価
格を下げろ」とネゴが入ります。あるいは上場会社であれば株主から
「ならもっと配当しろ」と要求されます。例えばある重電メーカーの
場合は、今は利益を出すよりも研究開発や設備投資を最優先して行っ
ています。ある重電メーカーは40億円もの大型設備を海外からほと
んどネゴ無しで購入しましたし、ある制御機器メーカーは営業部門を
リストラすると言いながら、生産体制は倍増させて世界シェアを取り
にいく計画だといいます。
下手に利益を出して配当をするよりも、研究開発や設備投資にあてた
方が良いと思っているのでしょう。

何もせず動かず、不調な顧客だけを相手にしていても前向きな情報は
中々入ってきません。ところがマーケティングで網を広げ、様々な顧
客からの情報を取っていると、様々な前向きな話が入ってきます。
この様な意味でも、不況期は「商圏の拡大」「新規開拓」が必須のテ
ーマになるのです。

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